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調査報告のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピック等、国際的なイベントの日本開催が予定されていることもあり、訪日旅行者の増加傾向は続くと見込まれる。そして、訪日旅行者の約9割が中国・韓国・東南アジアからの旅行者であることから、同じくアジア出身者が9割を占める留学生が観光関連産業において活躍できる場は大きい。実際、ホテルや旅行代理店等において、外国人留学生を採用する動きは目立つようになっている。また、現在、外国人観光客に対して通訳及び観光案内を行う者の国家資格である通訳案内士試験において、従前の英語、中国語等の10ヵ国語に加え、2018年度よりベトナム語、マレー語、インドネシア語の通訳ガイドの追加が検討されているが、このような動きも外国人留学生の観光関連産業への雇用拡大につながるだろう。4 むすびに            ―多文化共生の視点からの支援― 現在、在住外国人の多くは労働者として、わが国の経済活動を支える上で大きな役割を担っている一方、外国人労働者及び家族は、言語や文化の違い、昨今の厳しい経済環境の中で、雇用、居住、教育等の面で様々な課題を抱えている。外国人労働者及び家族が地域住民としてコミュニティに参加し、子どもの教育に保護者として関わっていくためには、彼らの文化・習慣に配慮した、いわゆる多文化共生の視点に立った環境づくりが必要となろう。そのため、外国人労働者を雇用する地域の中小企業は社会的責任を認識し、外国人労働者の人権を尊重し、労働関係法令の遵守等に自主的に取り組む必要があるといえるだろう。 既に、国や地方自治体では、定住外国人の就業支援、多文化共生に係わる取組みが進んでいる。厚生労働省では、リーマン・ショック後の2008年度から始まった「日系定住外国人のための就労準備研修」が、2015年度から定住外国人全般に対象を拡大して「外国人就労・定着支援研修」として実施され、全国の地方労働局やハローワークに就職支援コーディネーターを配置する等の支援に取り組んでいる。また、地方自治体も外国人の就業促進施策として、求職者相談窓口での通訳配置や介護研修などの職業訓練を行う等、外国人労働者に対する支援を行っている。就労支援だけでなく多文化共生の視点に立った地方自治体の取組みも進んでいる。ここでは、一例として、定住外国人が多く住む東海地方の3県1市が平成20年1月に策定した「外国人労働者の適正雇用と日本社会への適応を促進するための憲章」に係わる取組みを紹介したい。同憲章では、企業に対し、外国人労働者の多様性にも配慮しながら、安全で働きやすい職場環境の確保等を要請している。平成24年2月には、静岡県も同様の憲章を策定し、東海地方4県と名古屋市は、憲章の普及のために毎年合同のセミナーを開催することで、外国人労働者の労働環境の整備を進めている。 今後の人口減少社会において、多くの中小企業が人材の確保に悩み、中小企業の大廃業時代が来るだろうと予想されている。そのような状況の中で、外国人労働者の有効活用を図ることは中小企業の生き残り戦略の一つの選択肢となりえよう。外国人労働者の受入について検討もしていない事業所も未だに多いことから、外国人労働者の活用に向けた経営者等の意識改革が必要であろう。そして、企業、教育機関、行政の産学官がともに協調して、定住外国人を含めた誰もが活躍できる地域づくりを目指すことが、地域の中小企業が優秀な外国人人材を獲得するカギとなるだろう。【参考文献】厚生労働省、『「外国人雇用状況」の届出状況』、2017年1月厚生労働省、『平成28年度「帰国技能実習生フォローアップ調査」』、2017年8月日本政策金融公庫総合研究所、『中小企業における外国人労働者の役割~「外国人材の活用に関するアンケート」から~』、2016年12月46中小企業支援研究

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