RSS_2018
5/66

3中小企業支援研究 Vol.5ング基本方針』の考え方・文言を比較する。 2014年「金融モニタリング基本方針 (監督・検査基本方針)」の「Ⅴ.中小・地域金融機関に対する監督・検査」には、「地域金融機関は、特定の地域に密着した営業展開を行っており、中小企業や個人を主要な顧客基盤としていることから、地域の経済・産業活動を支えながら、地域とともに自らも成長・発展していくという「好循環」の実現に向けた取組みを強化することが求められている。 また、地域経済において、人手不足も見られる中、その活性化を図っていくため には、企業や産業が、必要に応じ穏やかな集約化を図りつつ効率性や生産性を向上させ、地域における雇用や賃金の改善につながることが期待される。 このため、地域金融機関は、地域の経済・産業の現状及び課題を適切に認識・分析するとともに、こうした分析結果を活用し、様々なライフステージにある企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価(「事業性評価」)した上で、それを踏まえた解決策を検討・提案し、必要な支援等を行っていくことが重要である。特に、目利き能力の発揮による企業の事業性評価を重視した融資や、コンサルティング機能の発揮による持続可能な企業(特に地域の経済・産業を牽引する企業)の経営改善・生産性向上・体質強化の支援等の取組みを一層強化していくとともに、 継続困難な企業に対する円滑な退出への支援にも取り組んでいくことが求められている。 こうした取組みは、取引先企業の生産性向上や産業の新陳代謝の促進につながるものであると同時に、地域金融機関にとっても、単なる金利競争ではない、付加価値の高いサービスの提供による競争を可能とし、自らの安定的な収益の確保及び健全性の維持・向上につながるものである。地域金融機関は、こうした役割を持続的に発揮していくために必要な機能や態勢及びその前提となるリスク管理態勢や経営体力の一層の強化を図っていくことが重要である。」(下線は筆者)という表現がある。1 この文書で「事業性評価」は、企業の事業の内容や成長可能性の適切な評価、と記載された。 2003年3月27日、金融審議会は「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」報告を纏めた。その中で、「リレーションシップバンキングにおいては、貸し手は長期的に継続する関係に基づき借り手の経営能力や事業の成長性など定量化が困難な信用情報を蓄積することが可能であり、加えて、借り手は親密な信頼関係を有する貸し手に対しては一般に開示したくない情報についても提供しやすいと考えられる。この結果、リレーションシップバンキングにおいては、借り手の信用情報がより多く得られ、エージェンシーコストの軽減が可能となるものとされた。」(p.3。下線は筆者)と記載している。 下線のように、「事業の成長性など」というフレーズは、先の「金融モニタリング基本方針」と同じである(先の引用の下線部)。このようにリレーションシップバンキング報告(ないし行政)の当初から、事業性評価は織り込まれていた。また、同報告では担保・保証に過度に依存しない融資を目指すことがその柱に据えられ、リレーションシップバンキングのエッセンスになっている。同時に、企業の発展ステージを念頭に、目利き機能を前面に置き(創業期など)、企業の成長・安定期における経営支援・経営相談というコンサルティング機能に力点を置き、さらに衰退期の早期再生などに取り組む(抜本再生も)ことが目指されたのである。その際、ソフト情報(定性情報・非財務情報)を重視し、活用することが盛られたのである。 「モニタリング基本方針」でも、企業の発展ステージを意識して、「目利き能力の発揮による企業の事業性評価を重視した融資や、コンサルティング機能の発揮による持続可能な企業(特に地域の経済・産業を牽引する企業)の経営改善・生産性向上・体質強化の支援等の取組みを一層強化していくとともに、 継続困難な企業に対する円滑な退出への支援」と記し、創業期・発展成長期・退出期の対応を示している。 このように、「モニタリング方針」と「リレーションシップバンキング報告」は、同じ文言とコンセプトで構成されている。1 地域金融機関は、必要に応じ、外部機関や外部専門家を活用しつつ、様々なライフステージにある企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価(「事業性評価」)した上で、それを踏まえた解決策を検討・提案し、必要な支援等を行なっていくことが求められている。特に、目利き能力の発揮による企業の事業性評価を重視した融資や、コンサルティング機能の発揮による持続可能な企業(特に地域の経済・産業を牽引する企業)の経営改善・生産性向上・体質強化の支援等の取組み。財務内容や返済履歴等といった過去の実績に必要以上に依存することなく、その成長可能性や持続可能性を含む事業価値を見極めるために具体的にどのような取組みを行なっているか、などである。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 5

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です