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56中小企業支援研究技術力を高める取り組み 同社では、競争優位の源泉は、技術力であり、技術革新をすることが事業の持続可能な発展につながると考えていることから、平成24年より、技術力をさらに高めることを目的に、変形刃の開発・製造をテーマにした経営革新計画に取り組んだ。 市場にある変形刃はトムソン刃に曲げ加工を応用した製品が多く、刃に継ぎ目ができ、刃先も研磨していないため、使用時に、完全に抜き上がらない等の使い勝手の悪さがあった。同社では、エンドミル加工※3により成型し、砥石加工により刃先を研磨し、完全に抜き上がる変形刃を開発し、他社製品との差別化に取り組み、一定の成果を上げた。 次に、海外製品よりも切れ味が良いとの評価を受けていた医療用穿刺針のシェア拡大の課題となっていた品質と生産性の大幅な向上を目指し、新規加工工程の開発に着手し、産学官連携による課題の解決に取り組んだ。 同社は、地元金融機関が設立したコラボ産学官埼玉支部が主催する技術相談会を活用し、埼玉大学名誉教授や埼玉県産業総合技術センター研究員等で構成される「ステンレス鋼等 研磨研究会」に参加して、技術面からの助言を受け、電解研磨装置を開発し、低侵襲性を確保したまま、研磨方法を砥石研磨から電解研磨に変えることで、1本に7分30秒を要していた研磨加工時間を4本で1分30秒まで短縮することが可能となった。戦略的な営業展開 同社の主力製品である丸刃は、取引先への配慮から自社製品に関する情報の発信を行うことが難しかったため、産学官連携によって開発に成功した医療用穿刺針に関する技術・ノウハウを積極的にアピールした販路拡大の方法を検討した。そこで、埼玉県産業総合技術センターの専門家のアドバイスにより、医療用穿刺針の製造ノウハウを保護する観点から、ノウハウを開示する必要のある特許ではなく、意匠による権利保護により、同業他社から模倣されるリスクを低減させた営業展開をすることになり、意匠登録をした。医療分野での取引先を増やし、既存の大口取引先への依存度を低下させ、経営の安定化を目指すため、経営者の長男が医療用穿刺針の営業に従事し、商談会や展示会に積極的に参加し、見込み顧客へのアンケート調査の実施等を行い、新規顧客の獲得に邁進している。熱意ある若手従業員の採用・教育 組織内の活性化には、熱意のある若手従業員が必要と考える同社では、可能な限り若手を採用し、多能工化を目指し、OJTを中心に、公的団体等が主催する研修会へ積極的に従業員を参加させ、外部との人脈作りにも力を入れている。平成29年からは、社内の労働環境の改善にも取り組み、ローテーションで従業員が定時に帰宅できる働きやすい環境の整備にも努めている。 また、従業員教育の一貫として、地元の事業協同組合の組合事業にも積極的に参加し、地元の経営者とのつながりも強化しながら、情報交換を密に行っている。経営革新計画策定による後継者の育成 現在、入社後数年の経営者の長男が、同社を取り巻く経営環境を分析し、技術面や人材面等、同社の強みの他、既存事業の売上構成とその内容、変動費と固定費について把握した後、長男が中心となって、新たに進出する医療分野での取り組みをテーマにした経営革新計画の策定及び実施をすることで、次期後継者としての資質を高める取り組みを行っている。※3 水平方向(先端部)と垂直方向(両側)に切削刃があるエンドミルを回転させながら、切削する加工方法で、穴、溝、平面及び三次元曲面等多様な形状に切削加工し表面精度が高い仕上がりができる。事例報告

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