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6中小企業支援研究課題も見られる。図3のように、信用補完制度を利用した条件変更企業は2015年度に17万社ある。とくに、保証協会の保証付き融資は証書貸付が多く、約定通り返済される限り、期限毎(月、四半期、半期毎)のチェックを除くと、きめ細かいモニタリングはなされない。まさにLazy Bank状態になる。[2.2] 事業性評価を推進する信用補完制度に このような状況をいかに改善するのかが2015~16年にかけての信用補完制度の見直しの背景である。中小企業のライフステージに応じて種々の対応の検討がなされたが、金融機関のため、保証協会のため、保険収支改善のため、という視点ではなく、中小企業の経営改善・支援に必要な制度設計(事業性評価)が重要な視点であった。 報告のポイントは、プロパー融資と保証付き融資の協調・連携(リスク・シェアリング)、リーマン・ショック級の大規模危機対応制度創設、創業期・小規模企業の100%保証枠の拡大、セーフティネット保証5号の部分保証化(80%)である。7 金融機関のモラル・ハザードを防止するには保証割合の縮小・保険料の引き上げなどを企業のリスクに対応して多様化することもあり得る。しかし、保証割合を引き下げても金融機関のリスクテイク能力を劇的に向上させることに繋がらない可能性もある。Lazy Bank問題が回避できないからである。  そこで、金融機関による信用保証の付かない融資(プロパー融資)を確保することが、その中小企業に対する金融機関の積極的な支援姿勢に直結することから、信用保証協会が、金融機関のプロパー融資の状況や経営支援の方針等を確認しながら保証を実施することにより(事業性評価)、保証付き融資とプロパー融資を適切に組み合わせるリスク・シェアリングを行なう、ことを求めた。 全国に51ある保証協会も地域金融の一端を担う存在である。従来、金融機関からの保証の申込みを審査し、保証料を受領して保証契約を結び、期限が来たときに借り手が返済できない場合に、金融機関に代位弁済する。その場合は求償権を引き継ぎ、借り手から回収を行なうが、回収できなければ、国の再保険から支払いを受ける。この限りでは保証協会は債権保全を行なう黒子的存在である。 地域金融は地域経済の疲弊などから課題も多い。地域金融機関がメインプレーヤーだとしても、限界もある。そこで保証協会の経営支援の一層の強化を目指すことに焦点を当てている。とくに事業再生の局面では、経営者は複数の金融機関と経営改善計画の調整を進めなければならないが、経営者にとっては調整が大きな負担となり、実質的に進まなくなることも多い。塩漬け状態になってしまう(living dead)。こうした場合に、信用保証協会が専門家を派遣して経営改善計画の策定を支援しながら、各7 セーフティネット5号は、業況悪化業種に適用するもので、緊急保証以来活用された制度で、利用も多かった。(図3)中小企業庁ホームページより(http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/2016/161221kihonmondai2.pdf  p.34)

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