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XECUTIVE 書や仕様書が来るのでしょうか。田中:仕様書や指示書が来る場合もあるのですが、「こういうものを切りたい」という相談を受けることも多くあります。切れ味重視ですか、耐久性重視ですか、こうすると欠け難いですよ、等々顧客のリクエストに応えるように、また提案もしています。青木:刃物に関するコンサルテーションもされるのですね。それは凄い。田中社長のノウハウを頼りにしている顧客への提案営業もされていますが、短期間でそれだけの知識を蓄積されたのは凄いですね。沿革について青木:田中社長は2代目ということですが、沖電気のシステムエンジニアから職人技が必要な事業を引継いだ経緯を教えていただけますか。田中:平成4年に先代が独立し、三起ブレードを設立しました。その後先代が急逝したため廃業も考えましたが、一人娘である妻の事業継続の想いに応えるために私が事業を引継ぐ決心をしました。そして、一人だと不可能だと感じていたので仲間を募ったところ、共感してくれた仲間が社員として入社してくれました。しかも、私よりも早く入社して現場の仕事に慣れるようにしてくれました。青木:全く畑違いの業界への転職となったわけですが、結婚後に先代を手伝って技術の修得をされていたのでしょうか。田中:そうですね、結婚後には週末に手伝っていましたが、技術や治具の使い方を習う前に先代が急逝しました。研磨業界の事も全く知らず、手伝っている内容は一部に過ぎなかったため、また研磨機の仕様や治具の使い方を全く知らない状態で引継いで良いものか悩みました。当時は簡単な研磨しかできなかったために、既存顧客にはファックスで状況を連絡して経験のない仕事は断っていました。しかし、どうしても当社に仕事を頼みたいというお客様が多く居ました。何とか対応するなかで、ゼロから研磨機の仕様を調べ、治具を作り、先代が残した治具がこの作業に使えないかとパズルゲームのように組み合わせて何とか対応していました。しかしながら、職人としての技術を見てこなかったので、先代のネットワークや自分が知り合った研磨屋に弟子入りして技術を教わって持って帰るということで対応していました。青木:よく技術を教えてもらえましたね。やはり、先代のネットワークという知的資産が大きかったのでしょうか?田中:私が知り合った研磨屋もありますが、多くは先代のネットワークです。特に、最も多くの技術を教えてくれたのは、私が師匠と呼んでいるのですが、先代が勤めていた会社で一緒に働いていた40代半ばの職人です。師匠は、先代をとても尊敬されていて「先代が亡くなると追い越すことが出来なくなる。だから、俺がお前に技術を教えて、競争して、俺が一番だってことを証明する。」と言って多くの技術を身につけさせてもらいました。先代の知的資産の恩恵をいただきました。青木:その師匠は先代の仕事をご存じなので、残された治具の使い方を教えてもらえたのですか。田中:先代のクセや方式があるので、師匠もわからなかったです。師匠から学んだ技術で当社にある治具を使って研磨することが出来ないため、会社に戻って治具をどの様に使うか、または新しく自作するということを繰り返しました。治具だけに留まらず、砥石も何千種類もあるため、使う技術もガラリと変える必要があります。そのため、技術の承継は非常に重要です。青木:「この治具を使うためにはこの技術」と一子相伝のような世界ですね。研磨の世界に飛び込んで、その面白さを感じられている根本を見つけられたのかなと推察します。田中:技術の承継については、自分の代で途絶えても良いと考えている職人も多いように感じます。青木:少し話題が逸れますが、令和2年11月4日にYouTubeで開催された関東経済産業局後援の「アトツギベンチャーMeet-UP!Vol.1 in CHIBA」のトークセッションに登壇されていましたね。テーマは、息子と娘と婿/三者から見た”アトツギあるある”でしたが、いかがでしたか。田中:非常に面白かったのですが、私の場合は娘婿と先代がガチンコでぶつかるというようなことは無20中小企業支援研究

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