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XECUTIVE 人としての作業を求めていることになります。当社では、失敗を個人の責任にするのではなく、会社の責任として捉えて手順書の改定や治具の使い方の説明を改善するようにしています。もっとも、手作業なので熟練度は出るのですが(笑)青木:社長のシステム開発の知識を活かしたことは他にありますか。田中:職人技を使わないで誰でもできるようなフレームワークを作って、更に手順書を作るというのは前職のシステムエンジニアの考えそのものなのです。なので、職人が感覚で判断していたことを、インプットすればアウトプットが出るようなアプリを作り、それを手順に組み込むようにしています。それによって、主婦が職人と同様の成果を出せるようにしました。青木:NC工作機のような感じですね。田中:当社の研磨作業はNC機を使っていません。NC機は数値を入れるだけで簡単で早いようなイメージがあると思いますが、実は段取りに非常に時間が掛かります。再研磨の対象は何千種類とあるため、NC機では対応しきれません、よって、先代が残した原始的なメカニズムの汎用機が重宝しています。機械とデータは繋がっていないのですが、手順書や自作のアプリ、治具、スマホ、パソコンを駆使することでフレームワークを強化し、自動化や職人技に代わるものとしています。青木:そうなのですね。しかし、手仕事となると油で手が汚れたり荒れたりすると思うのですが、定着率はどうですか?田中:おかげさまで、辞めたのはご主人の転勤で引っ越された方だけです。なので、それなりに気に入ってくれているのかと思っています。また、新規募集すると直ぐに応募があり、働きたいという方には順番待ちしていただいています。青木:その要因は何だとお考えですか?田中:勤務時間がフレキシブルなことと、失敗を会社が全て引き受ける、という方針が受け入れられているのかと思います。それと、他の従業員にも個人の責任にしないようにと言っているので、人間関係も良くなっているのかなと感じています。知的資産経営青木:お話を伺っていますと、先代のネットワークや人望という知的資産が事業を承継して継続する上で役に立ったのだと思われます。そして、御社の知的資産の掘り起こしということで2019年に千葉県中小企業診断士協会の知的資産研究会の診断を受けられて、千葉商大の井田毅記念セミナールームで3チームのプレゼンを聞いていただきましたが感想をお聞かせください。田中:診断時のインタビューやワークショップを経てプレゼンを聞くことで、経営者とはこういうものなのかと気づきがあり、サラリーマンの経験しかない自分自身が変わったと感じています。自分が考えていたことに言葉を当てはめて教えてもらえたので、より理解が深まりました。より深まったことで、新たな悩みが出てくるのですが、自分自身が前進出来て、その時からサラリーマンではなくなったのを実感しています。また、社員やパートの方々と一緒にプレゼンを聞いたことにも価値があったと思います。会社が何をしているのか、会社の理念はどのようなものか、ということを客観的に分析されたものをプレゼンで披露していただいたので、次の日にはパートの方々もグッとヤル気が上がったのが実感できたので大変感動しました。青木:パートの方々は、当たり前だったことが自分たちの強みであり、特に構造資産としてのフレームワークがきちんとしていることに気が付かれたのではないでしょうか。今後の事業計画青木:御社の今後の事業計画を教えてください。田中:3つ考えています。1つ目は、今の機械刃の再研磨の取り扱いを伸ばすこと。2つ目は、高齢化して跡継ぎ不在の職人の技術を承継することです。単に新しい技術の習得に留めず、今の技術とのシナジー効果を期待しています。3つ目は、研磨にIoTを導入することです。製造現場にIoTを導入することは課題も多いと言われていますが、システムエンジニアの知識を最大限に活用して業務を補助する22中小企業支援研究

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