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Topicsトピックスコロナ禍の事業者支援栃木県信用保証協会 保証部長千葉商科大学「中小企業診断Ⅰ」講師 経営学博士安西 克巳24中小企業支援研究1.はじめに信用保証協会は、「信用保証」により、中小企業者(以下、「事業者」という)の成長と繁栄をサポートし、地域経済の発展につくすことを目的としている。現在のコロナ禍、事業者が厳しい経営環境にあるなかで、保証協会には資金繰り支援、経営支援の面等から期待される役割は大きい。事業者支援の難しさは、「財務評価」のように客観的かつシステマチックな評価が可能であるもの、「定性評価(経営者の資質、技術力、販売力等)」のように評価の多面性、簡便性、客観性等に課題があり一律的な評価が難しいもの、「経営支援」のように個々の経営状況により支援方法が相違するもの等が混在しているため、保証協会や金融機関等の事業者を支援する者(以下、「支援者」という)には相当の知見や経験等が必要になることである。事業者にとって事業は人生そのものと考えている場合もあり、支援する側も重責である。コロナ禍の現在、事業者支援は、一層難しくなっている。不測の事態が起こり、大幅な減収減益を余儀なくされ、コロナ前後で決算数値を大きく変動させた事業者も多いなか、過去の財務諸表を活用した「財務評価」をどのように活用すべきか、また、コロナ以前の水準に売上高を戻すことさえ容易ではない状況下、いかに「経営支援」をすべきか等、課題が多い。今回はありがたいことに貴大学の経済研究所機関誌『中小企業支援研究』に原稿執筆の機会を頂いたので、栃木県信用保証協会の取り組みを交えて、コロナ禍の事業者支援のあり方について整理する。2.栃木県信用保証協会の取り組み(1)資金繰り支援信用保証協会は、法律に基づいて設立された公的な保証機関である。事業者が金融機関から事業資金の融資を受ける際、公的な保証人となることで融資を受けやすくすることを目的としており、全国に51協会が設けられている。保証協会の業務は、時代に合わせて適宜見直しが行われ、現在に至っている。過去に発生した経済危機時には保証承諾が大幅に増加し、事業者の資金繰りを支え、倒産を抑制する等、緩衝材的な役割を果たしてきた。今回のコロナのように、事業者が自らの責任でない外部環境の危機に直面した時こそ、保証協会が役割を発揮する時である。今年度上期、栃木県信用保証協会(以下、「当協会」という)は、コロナ禍の事業者を支援するため、迅速な資金繰り支援に取り組んだ。まず国によるセーフティネット保証4号及び5号、危機関連保証に加え、地方公共団体によるコロナ対応制度の取り扱いを開始した。また、令和2年5月からは実質無利子無担保、保証料の負担を軽減した「新型コロナウイルス感染症対策パワーアップ資金」の取り扱いをスタートして、事業者の資金繰りを支えた。その結果、当協会の保証承諾は令和2年4月~11月で332,122百万円、前年比385.9%と急増した。一方、事業者が返済困難になった場合に金融機関に支払う代位弁済は3,197百万円、前年比116.8%と落

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