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トピックス25中小企業支援研究 Vol.8ち着いた動きで推移している。コロナ禍、事業者の資金繰り安定を図ることができたと考えている。(2)企業支援者育成シンポジウムの開催コロナ禍で孤軍奮闘している事業者を支えるため、支援者は産学官金の力を結集して、経営支援に総力戦で取り組むことが必要である。今回、栃木県では県内に本店を置く金融機関と当協会が共催し、宇都宮財務事務所、商工団体や士業等の事業者支援機関が後援する「オール栃木」で、シンポジウム「とちぎ発 地域金融のコロナへの挑戦 ~ 地域金融マンとしての誇りを持ち、企業支援を本気で考えるためのシンポジウム~」を令和2年11月13日に開催した。金融庁の「令和2事務年度金融行政方針」には「地域・組織を超えて事業者支援のノウハウを共有する仕組み」の重要性が記載され、当シンポジウムは金融庁の後援も受けた。開催目的は、経営支援強化に向け、支援事例の共有と意識の醸成を図ることであり、オンライン配信も含め500名を超える方に参加頂いた。シンポジウムは三部構成とし、第一部は、金融庁監督局の日下智晴地域金融企画室長が「コロナ禍の地域金融に求められる役割」をテーマに基調講演を行った。第二部では、県内外の各支援機関で、経営支援に関して豊富な知見を有する実務担当者が、実例の紹介等を行った。第三部は5名の講師別に分かれての分科会を開催し、実例紹介に対し、質疑応答や活発な意見交換が行われた。経営支援は支援先の状況によって様々であり、正解はない。だからこそ、それぞれが持つ知見を結集し、支援者一人一人が多くの支援のありようを認識することに意味があると考えている。3.コロナ禍の事業者支援について(1)事業性評価の重要性「財務評価」は数値で他社との比較が可能であり、倒産判別の精度も高いことから、現在では財務諸表の数値をシステムに入力すれば、評点や将来の予想デフォルト率が出力される。この評価を活用して迅速に融資を行うのがトランザクションバンキングである。コロナ禍、事業活動の制約等から決算数値が大きく悪化した企業も多く、過去の財務諸表の評価に重きを置いた支援は課題もある。今後重要になるのは、財務諸表に現れない定性面から、コロナ禍における「事業存続力」や、アフターコロナ時の「事業回復力」をいかに評価するかであって、支援者の評価の目を磨いて「事業性評価」の取り組みを一層強化することであろう。(2)短期集中支援の必要性今後の経営支援は、コロナ禍の厳しい経営環境のなか、事業者の事業存続のモチベーションをいかに維持していくかが重要になる。そのためには、事業者との継続的な対話が必要になるが、支援者のマンパワーが限られているなかで、効率的・効果的な支援方法を検討しなければならない。「より多くの事業者に、より早期の段階から、より実効性のある」支援を行うために、経営改善の仕方に優先順位をつけて対応することも必要である。現状は、事業者の事業存続を後押しする経営支援に重きを置いて、まずは目先の資金繰り改善・単月のCF改善を優先し、次にPL(損益計算書)改善に取り組み、黒字化をサポートし、続いてBS(貸借対照表)改善を支援する方法が考えられる。コロナ禍、奮闘している事業者の経営改善には、悠長な時間的余裕はない。ここから数年、支援者は短期集中・総力戦で、経営支援に取り組むことが求められる。支援者は、個社に時間をかけて今後の中図表 栃木信保の保証承諾の推移

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