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26中小企業支援研究長期計画を策定するなど深く支援することも必要であるが、一方で、まずは多くの事業者の資金繰り改善・単月CF改善を支援することが重要になる。(3)本業支援の重要性コロナ禍、多くの企業が不足資金を借入で対応した。今後、増加した借入金を返済するためには従来以上のCFが必要になる。しかし、販売先数の増加は容易ではなく、これまでの販売先との関係上、価格の値上げはそうできるものではない。原価低減、販売管理費の削減もぎりぎりまで実施してきており、今後どのように経営改善するか課題は多い。支援者は、得意とする財務諸表や資金繰り等の数値からのアドバイスに加えて、事業者に寄り添って、販路拡大、生産性向上、海外展開、DX推進、事業転換等を支援することが必要になる。経営改善の難易度が上がっており、支援者の本業支援力のレベルアップが急務である。また、多くの事業者が経営改善を必要としている状況下、支援者の数が圧倒的に不足している。組織・地域を超えて、産学官金の事業者支援機関が連携を強化して支援にあたることが望まれる。(4)BS改善支援事業者には、生業型の方と成長発展を目指す方とがいるが、いずれもPL改善後はBS改善への着手が必要になる。BS改善支援については、成長発展を目指す相応規模の事業者についてはDDSや第二会社方式等を活用した再生支援が選択肢になるが、今回、コロナで影響を受けている多くの生業型の小規模事業者に対しては、モラルハザードやコストの問題等があり、同様の再生手法の活用は難しい。今回のコロナの特徴の一つは、多くの小規模事業者が借入増加等によりBSを大きく悪化したことであり、小規模事業者の抜本的なBS改善にいかに取り組むか、解決方法を見出さなければならない。詐害行為との関係もあり慎重な検討が必要になるが、BS改善に長期を要する事業者については、後継者への事業承継を進めるなかで、前経営者時代に過大になった借入金をどうするかまで踏み込んで、経営資源を円滑に引継ぐためのガイドライン策定などの検討が期待される。4.おわりにコロナ禍の事業者支援は大変難しいものになるであろう。今後を考えると、この先「わからない」「見えない」「予測困難である」というネガティブな言葉が並びがちであるが、コロナ禍で奮闘している事業者を支援するためには、支援者側もしっかりと未来を見て、試行錯誤しながらも前進することが必要である。近い将来、我が国はコロナを乗り越えることができると信じているが、今回のコロナという前例のない異常な事態のなかで、事業者支援のために実施された政策、そして現場で起きたこと等は、次世代のために、正確に記録を残しておくことが必要である。世界的規模で、人々の生活にまで影響し、終息時期が見えないコロナに対して、事業者・支援者が諦めずに立ち向かった軌跡は必ず将来に活きるはずである。最後になるが、事業者が何とかこの苦境を乗り越えることを願うとともに、支援者にとって事業者支援が一段と高みに登る機会になることを期待したい。

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