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調査報告ファミリービジネスにみる「継続力」の源泉とは~なぜ長寿企業の多くはファミリービジネスなのか~鉢嶺 実信金中央金庫 地域・中小企業研究所主任研究員はじめに信金中央金庫 地域・中小企業研究所では、近年、調査研究テーマの一つに中小企業の「継続力」を掲げ、そこで解明すべきターゲットを“幾度にもわたって事業承継を成し遂げていく力”と捉え、いわゆる親族内承継を軸に事業承継をクリアし続けている全国各地の“ファミリービジネス”に対して集中的にヒアリング調査を実施してきた。本稿では、これをあらためて振り返りつつ、近年、ポジティブな存在として見直されつつある“ファミリービジネス”というキーワードを軸に、その「継続力」の源泉について考察してみた。1.ファミリービジネスとは一般に、事業承継の局面において、親族間でのバトンタッチによって事業を継続している企業は“同族企業”あるいは“同族経営”と呼ばれることが多い。こうしたなかで、近年、わが国ではこれを“ファミリービジネス”(以下「FB」という)というポジティブな概念で捉えるケースが増えている。これまでわが国で“同族経営”といえば、不透明な経営によって不祥事が多発しがちといったようなネガティブなイメージを持たれることも多かった。しかし、欧米諸国では、同族経営による企業をFBという概念でポジティブに捉えているケースが多く、事業の「継続力」をも備えた存在として高い評価を受けている。こうしたなかで、近年のわが国においても、経済社会の喫緊の課題といわれている事業承継問題などを切り口として、FBの「継続力」などに対してポジティブに見直す動きが急速に広がっており、FBを研究対象とするような活動も活発化しつつある。ちなみに、FBについての統一的な定義はないが、FB研究の領域においては、「所有(オーナーシップ)」と「経営(ビジネス)」という要素に加え、「家族(ファミリー)」という要素を加えた「スリーサークルモデル(3Cモデル)」を基本的な枠組みとして用いるケースが多い(図表1)。おおむね「所有」か「経営」のどちらかで、一つの家族・親族が一定の支配権を握り続けていれば(一定の影響力を有していれば)、FBと位置付けることは可能とされており、いわゆる“家族経営”よりも広い概念で捉えることが一般的となっている。なお、わが国の全上場企業の中に占めるFBの比率は50%超に及ぶという調査結果もあり、FBが経済社会の中で大きなウエイトを占めていることは定説となりつつある。また、わが国が世界一の“長(図表1)ファミリービジネスのスリーサークルモデル(3Cモデル)40中小企業支援研究(備考)「ファミリービジネス白書」(2018年版)などをもとに信金中央金庫 地域・中小企業研究所作成

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