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はない。しかしながら、日本は圧倒的に同族系企業が多いなか、コーポレート・ガバナンスが機能していないケースが一定数存在するものと思料される。2.上場企業・大会社・非上場の大会社以外についてのルール 以下に、日本の株式会社が所属する3つのカテゴリーに必要な会計、監査、内部統制について記載してみる。①上場企業⇒金融商品取引法監査:金融商品取引法第193条の2により定められている。  ・財務諸表監査(会計監査):『無限定適正意見』表明が上場維持に不可欠  ・内部統制監査②大会社(資本金5億円以上、又は負債総額200億円以上の企業)  ⇒会社法監査:会社法第436条第2項1号によって定められている。  ・連結計算書類や計算書類、及びその付属明細書の適正性について、会計監査人による意見表明が必要③非上場の大会社以外(ほとんどの中小企業が該当)⇒外部監査の対象外Ⅲ.タカタ社(上場)の破綻事例1.タカタ社の概要 自動車のエアバッグで世界シェア2位を誇っていた上場企業であったが、エアバッグの事故とその後の対応の不手際により、2017年(平29)6月に、負債総額約1兆7千億円という日本の製造業過去最大規模にて破綻(民事再生法の適用の申請)したのである。 2.タカタ社破綻の原因 筆者は、タカタ社経営トップのミスジャッジがなければ、現在も破綻することなく従来のまま事業が存続していたものと推察する。破綻の原因を以下に3つ論じてみる。(1)硝酸アンモニウムを使用したエアバッグの生産停止時期 自動車事故発生時にエアバッグを膨らませる(インフレーター)為に必要な火薬原料として、硝酸アンモニウムを使い始めたのは2000年(平12)からである。爆発力が強い上、エアバッグの部品を小型化しやすく、加えて作動しないリスクも小さい。一方で、高温多湿の環境に長期間晒されると劣化して、金属破片が飛び散る異常破裂のトラブルが、2005年(平17)から確認されるようになってきた。 生産停止時期の1つ目として、このトラブルが確認された時点(2005年)で異常破裂の原因を究明(硝酸アンモニウムが原因)し、自動車メーカーと協力してエアバッグのリコールと生産停止をすれば、経営破綻は免れたと考えられる。筆者の推測ではあるが、翌年に東証へ上場する上場審査過程で、このト図表1 企業形態別監査マトリクス図表2 タカタ社の創業から破綻に至るまでの時系列資料45中小企業支援研究 Vol.8

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