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『中小企業支援研究』編集委員長前田 進56中小企業支援研究本年度は世界中を巻き込んだコロナ禍においての発刊となりました。執筆をいただいた皆様をはじめ、関係者の方々には大変なご苦労とご協力を賜り、本誌『中小企業支援研究』Vol.8を完成する運びとなりました。改めて深く感謝申し上げます。評論では、高千穂大学商学部教授の庄司真人氏より、マーケティングの新しい概念として、S-Dロジックにおける資源の捉え方とその展開について示していただきました。新たな視点から市場を捉えることで、閉塞したマーケットにまったく新しい価値の創造を実現しうるサービスの概念は、今後、実証的な研究が進み、これからの産業を考える上で無視することのできない視点になると期待されます。経営実務の面では、コロナ禍の影響で、世界中の経済がひっ迫しており、大企業、中小零細企業を問わず大きな痛手を受けている中で、日々奮闘する事業者への支援に現実感をもって携わる栃木県信用保証協会の地に足のついた活動事例は、力強い応援団となっていると感じさせられました。そして、それらのまさに対象ともなる3つの企業の、多様な問題に果敢に取り組んでおられる力強い取組みが、「経営者インタビュー」の中で紹介されています。そのうちの一つは女性社長が挑戦し続ける起業から成長へのプロセスであり、そして他の二つの企業では、力強い町工場の成長・存続の工夫と対応力の発揮の場面を紹介していただきました。一方、本号における調査報告と事例報告の中で、思いがけずファミリービジネス、いわゆる同族会社についての言及が見られたことは、当機構の研究員を始め、本誌読者諸兄にとっても、日頃から関わりの深いであろうこうした企業形態についての理解を得る上で、興味深いものであったことと思います。同族系企業が、ひとつには現在のような厳しい不測事象に遭遇した場合に、対応力を発揮して前に進んでいこうとする場面は少なからずあり、その要点はどこにあるのか、枝村氏の事例報告にみられたようなコーポレート・ガバナンスをはじめ、それ以外にも同族企業という企業形態の強みを活かすための課題にはまだ研究される余地がありそうです。さらに、本号においても、中小企業を支える取組みは、小坂氏の外国人労働者雇用の問題、名倉氏のAI・IoT活用の取組みと課題、また、堀内氏の商業者の集団としての街づくりにおける事業モデル開発へのアプローチという面からも紹介されました。いまだ落ち着かない状況下ですが、本誌が皆様の事業の継続のお役に立ち、また中小企業の経営支援研究の参考としていただければ幸いです。編集後記

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