中小企業支援研究vol1
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11中小企業支援研究 別冊 Vol.1園部 当時はネットもなかったし、タイムリーな情報がなかった時代です。アンテナを高くして情報を頼りに地方を回って取引をお願いしてきました。前田 NHKテレビでもその御苦労の様子が紹介されましたね。それは、簡単ではなかったでしょうね。園部 当時は特約制度が強くて、例えば東京には1軒お取引があると「当店はもう東京には要らないよ」と断られることもありました。前田 伺った年商からすると坪あたり年商が約5,000万円とどのような業種と比較しても非常に高い販売効率ですね。いわゆる粗利率はどれくらいですか。園部 粗利率は27%くらいです。前田 粗利27%というのは酒販業界では高いですね。普通は17~18%でしょう。園部 特殊というか隙間的な商売の仕方がよかったのかもしれません。もちろん仕入れにかかわる旅費・交通費などの諸掛がありますから。前田 九州各地を歩いての焼酎開拓でしたね。園部 焼酎ブームの時には品揃えと数量の確保で苦労しました。商品力を常に磨く前田 一般の酒販店の状況はどうなのですか。園部 スーパーマーケット、ディスカウントストア、ドラッグストアさんで酒類を購入する方が多いので厳しいと思います。当店は日本酒と焼酎の両輪があるので、大きな売上の減少には繋がっていません。このようなことは常にこれからも起きると思います。今は、国産ワインと和リキュールを加えて四本柱になっています。前田 現代とは状況は違いますが、1960年代にあんなに高価だったウィスキーのジョニー・ウォーカーの黒や赤ラベルが今では安く手に入るようになっていますからね。園部 必要な商品は、誰でも手に入れる工夫をする努力をします。常に環境は変化していますから。前田 そのために、当社も焼酎・地酒を大事にしながらも、品揃えの工夫をされているのですね。お取引先の開拓はどのようにされているのですか?園部 当社は、以前、回収不能な売掛金があり苦労したので、現在は現金でのお取引様を中心に商売をさせていただいております。前田 にもかかわらずお客様は増えたのですね。園部 今では、商圏も拡大し、全国からお客様がお越しいただいております。前田 宅配便の発達も転機になったのでしょうか。園部 そうですね。配送の面では宅配便の普及は大きかったと思います。酒販店に限らずいろんな業種が助かっていると思います。これがあるから、私どもも中心街から離れた鶴川の団地の中でもやっていける。通販はやっていませんが、遠方よりお客様が買いに来られて送れるというのは大きい要因です。当時は、我々も割れないように梱包するなどの工夫をしていました。宅配便業者さんも色々な工夫をしていました。これはお互いの工夫があってのことですね。前田 先ほどお店で拝見していると、買われていたお客様は、ほとんどまとめて送られていましたね。個人のお客様ですか。園部 はい、個人の方です。あのようにまとめて買っていかれるのです。ですから当店の場合は客単価が高いですね。商圏も町田、新百合ヶ丘、厚木、横浜、川崎、それから都心からも来られます。当店のような専門店化の商売をするとお客様の範囲は拡がりますし、また、地域密着だけでは成り立たないし、商圏が広くなければ商品の回転率も保てません。商圏拡大と顧客・蔵元との関係性強化前田 商圏を広げる工夫はどこにありましたか?園部 お客様の口コミ、ご紹介であったり、当店でやっているイベントの「酒人好の会」、先生方が書籍などで取り上げてくれたり、それからマスコミの力などが大きいと思います。前田 今では、価格破壊の原因となったビールなどはディスカウント商品になってしまいました。園部 そうですね。こう暑いとビールが売れるから儲かるでしょと言われますが、当店はビールの取り扱いはほとんどありません。ビールは、スーパーマーケット、ディスカウントストア、ドラッグストアの目玉商品なので積極的には販売せず、直取引の蔵元さんの酒に全力をあげて行動しました。自分たちは製造業ではないので、モノをつくることはできません。その代わり私たちは、お客様との信頼関係をつくる、お客様との関わりをつくることが店の力、ブランド力になっていくと考えています。あとは蔵

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