中小企業支援研究vol1
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12中小企業支援研究 別冊元さんとの信頼関係ですね。仕入れられなければ売上の伸ばしようがないので、時間を作って蔵元さんへ顔を出したり、蔵元さんをお呼びして会を開いたりとか、人間対人間、心の繋がりですね。全国にこれだけ酒屋さんがある中で差別化するには、お店のブランド力が必要ですよね。小さく強い家族経営の魅力前田 当社は家族経営ですね。日本には家族経営の店が多いのですが、このように成長されたきっかけはなんでしたか。園部 家族経営ということでは、夫婦ともに酒屋が好きだったことでしょう。色々やっていた中でも常に前向きに考えていました。特に当店の女房はプラス志向ですから。もうひとつ重要なのは従業員の頑張りですね。商売なので売上が上がる時も下がる時もあります。毎年右肩上がりなんて難しいですよね。前田 お店で拝見していても奥様のお力は大きいですね。お客様の人気も高いですから。園部 二人で勉強会にも熱心によく出かけました。それから、何より専務が帰ってきたことです。前田 ご長男の将(専務)さんですね。大手のメーカーにいらっしゃったのでしたね。10年ほど前から私もお会いするたびに力強さが増して頼もしさを感じます。なのに、人を包む柔らかさがあって魅力的です。園部 専務は務めた会社での経験を活かして、休日や労務の制度のことなど企業的な体制を整えてくれて、いろいろなアイデアも取り入れていきました。若い人は若い人のアイデアがあります。私が持っていない商売の仕方なども持っています。世代交代もありますから、若い世代の蔵元さんなどは僕よりは同年代の専務の方が話しやすいとか、そういうこともありますね。前田 今では、仕入先の開拓も専務を中心に行われているのですね。園部 そうですね。従来の取引先を大事にしながら、新しい取引先を拡げています。世代交代をどう上手くやるかが我々家族経営(家業)の課題だと思います。組織として後に継承していけるようにしないと。成長だけでなくお店(家業)を存続、永続を大事にし、信用関係を築き、我々もしっかりやれば、100年でも200年でも残っていけると思います。それには大きな変化は必要ないと思いますが、革新をしていかないと。労働時間や社屋を建てるなどの労働環境を整えていくことなどの革新を行っています。前田 今、従業員さんのためにやっていることをお聞かせください。園部 大企業ではないので難しいのですが、労働環境の整備や、蔵元さんへの研修、情報の共有化も大事なので朝晩のミーティング、食事会なども行っています。また、休日の前日は午後5時には帰ってもらって家族サービスをしてもらっています。前田 以前は朝食の食事会もあったそうですが。園部 全国の酒販店の後継者さんが見習いに来ていた住み込みの頃はそうでしたね。今でも女房が毎朝おにぎりを20個とおかずをつくっています。朝早いから、朝食べてこない人が多くて、そうするといい仕事ができませんから(笑う)。前田 目に見えないところで奥様のご苦労がありますね。園部 それから、従業員には、利き酒師や焼酎アドバイザーなどの資格に挑戦してもらうようにしています。あとは、いつも言っているのは「目配り、気配り、思いやり」ですね。私たちの仕事は、ただ単にお酒を販売するだけでなく、お酒を通して感動を伝えていくことです。それから、農林水産大臣賞をいただきましたが、とても励みになっています。お客さんの期待を裏切ることができなくなりますし。東京商工会議所の「勇気ある経営大賞」もいただきました。これまでは発明などを行っているメーカーさんだけでしたが小売店で初ということでとても励みになりました。強い絆づくり、酒人好の会前田 町田市の商工会議所では商工会のころから親身な支援を続けられていて、市内に多くの有力企業を生み出した原動力になっていると思います。こういう風に聞いていると、最初からうまくいったように聞こえてしまいますが、当然、失敗例もあったでしょうね。園部 少し話しましたが、やっぱり、ビールを中心にやっている頃は、飲食店への売掛を回収できないことなどがありましたね。今はほとんど現金決済、配送も着払いです。前田 地元貢献もされていますね。園部 商店街の仕事や酒販組合の役員、家内は町内会の行事、盆踊り等をお引き受けしています。昔から酒屋は地域の主みたいなところがありますから、酒屋が元気でなければね。

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