中小企業支援研究vol1
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13中小企業支援研究 別冊 Vol.1前田 中小企業の皆さんは苦戦されていますが、それはどのようなことにあると思いますか。園部 言葉は悪いのですが、人任せの部分があったのではないでしょうか。やはり自分で考えていくことが大事で、情報は待っていてもこないから、アンテナを高くして、足で稼がないと。「まさるやさんは売れる銘柄をたくさん持っていていいですね」とよく言われますが、最初から売れる銘柄というのはありません。自分で工夫して育てていかないと。前田 今、お取引先はどれくらいあるのでしょう。園部 焼酎と日本酒を合わせると、180蔵くらいあると思います。銘柄の9割くらいは直取引、問屋を通らないものです。最初は苦労しましたが、今では育って大きな柱になっています。前田 美味しいところだけ取ろうとするのではなくともに成長していく関係ですね。美味しくない酒を造ろうとしている蔵元はないのでしょうから、知られていないだけで、人気のお酒に育っていくということがあるわけですね。園部 その通りですね。前田 ところで、先ほどお話に出た「酒人好の会」について伺いたいのですが。園部 明治記念館での「酒人好の会」は年2回、今回で30回になりました。造り手の蔵元さんと飲み手のお客さんのお話ができる機会を提供しようというものです。川上と川下で。蔵元さんは、どのようなお客さんに飲まれているのか、飲み手のお客さんはどのような人が作っているのだろう、という感じで。一度に300人から350人が1万円の会費で集まる会はちょっとないと思います。そもそもは、お料理も蔵元さんの地方の食材をご用意して。明治記念館の富士の間全室使って開いています。おかげさまで評判が良くて、常に定員をオーバーしています。前田 蔵元さんはどのくらい出られているのでしょう。園部 今年は、日本酒は29、焼酎は35の蔵元さんに参加していただきました。年2回ですから15年続いています。あとは、大きなイベント以外にも小さな会を、居酒屋さん等をお借りして少人数でやっています。前田 これまでのお話を伺っていると、仕入れと人間関係が大事だということがよくわかります。外国人のお客様などはどうでしょう。園部 外国人の方はよくいらっしゃいます。日本酒や焼酎を買いに。こちらからアプローチして来るわけではなく、口コミなどで来店されます。飲食店さんの場合は紹介ですね。特に拡げようとして当店から営業活動してはいません。ただ、当店を評価しているから紹介してくれるのでしょう。前田 ところで、奥様はお店ではどのような役割を。園部 接客ですね。女性ならではの接客がありますから。子供さんの名前を全部覚えていたりします。酒のつまみや料理の作り方までアドバイスしてくれています。当店の場合は接客も丁寧にやっているわけではありません。接客五大用語使ってやっているわけではないけれど、当店らしい接客をしています。前田 これからのまさるやさんについて伺いたいのですが。今、仕入れ等はほとんど専務が行っているのですか。園部 仕入れ、営業は専務に任せています。接客も若い従業員に任せています。自分や専務がいなくても店が回るようにしています。支店も出しました。以前、当店にいた従業員が酒屋をやったのですが、支援が必要なので別法人にしました。前田 同じノウハウはあっても実践は簡単ではないということなのですね。園部 工夫をし、継続することが重要です。前田 お話を伺って、明日が分からないのが商売だということを踏まえて努力し続けることが大切だということが良くわかりますね。園部 常に危機感を持っていないといけませんね。商売というのはゴールのないマラソン。苦しくても、売上が下がっても上がっても走らなければならないし。でも楽しいですね。前田 最後に、これからのお酒についてはどうでしょう。園部 お酒は少子高齢化が進むので量が売れませんよね。またお客様の好みも多様になっていますから大変な時代です。海外市場が注目されていますが、国内市場もまだまだ掘り起こせると思います。前田 日本のウィスキーも注目されていますね。園部 そうですね。大手だけでなく。そういう場合も有名になる前にお付き合いしていく、リスクを恐れずに一歩先に取り組むことが大事ですね。私どもは常に小さくてもオンリーワンの酒屋を目指して歩んでいきたいと思っています。前田 本日は大切なお話をたくさんありがとうございました。ますます日本の未来を創造していただくビジネスモデルとなる企業になられることを期待しています。■企業概要会社名………有限会社 酒舗まさるや住所…………東京都町田市鶴川6-7-2-102創業…………昭和43年2月取扱商品……日本酒、焼酎、国産ワイン、梅酒など1500種類従業員………9名資本金………500万円坪あたり売上高約5,000万円商圏…………町田市および都内、近県を中心に、全国からの来店がある店名…………現専務将氏が子供のころ承継意思を表明し、名前を社名に決定インタビュア:前田進アシスタント:中小企業診断士 大谷秀樹

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