中小企業支援研究vol1
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15中小企業支援研究 別冊 Vol.1ど、全国に目を向けてスポット仕入れや展示会仕入れなどを行い、仕入れの工夫をしました。「前倒し商法」とは、百貨店や量販店よりも半年ほど先行してメーカーから商品を仕入れ、販売していくことで、百貨店や量販店のピークよりも先に売り切ってしまう販売方法です。例えば夏物は1月頃から仕入を始め、4~5月頃には完売してしまいます。春物は、1~2月をピークに、秋物は8~9月がピークで、それが私たちが利益を取れる販売時期です。子供服の専門店といっても、シーズン物のピーク時期には百貨店や量販店の低価格販売には勝てません。そこで、アメリカを視察した時、夏に冬物を売っているのを見て、当社ならそれができると思いついたのです。前田 しかし、それは流行の先取りをしなければならないためのご苦労があるのではないですか?尾方 その通りです。お客様のニーズや季節の変化等、仕入には相当気を使う必要があります。だからこそ、大手の機械的なデータではやりきれない。つまり、経験を活かした感ピュータです。前田 第六感は、さすがに大手のコンピュータ、POS管理も行き届きませんからね。尾方 大手は大量仕入れするから安く売っても利益が出ますが、中小小売店は一品一品の仕入れ販売ですから基本的に安売りはできません。言うは易し、行うは難しです。前倒し商法による店舗運営前田 具体的に前倒し商法をご紹介くださいますか。尾方 1年前の売れ筋、死に筋を見て、それを参考に、売り手発想でなく、お客さまからのこういう商品がほしいということを優先します。メーカー主催の展示会でも来年の販売を予想し、半年前に仕入れます。春物、秋物を枚数でスポット買いをします。うちのデータだけでなく、展示会に全国から集まる展示場の社員さんと相談したり、それ以外の社員さんとも相談にのってもらいます。もちろんそのまま買うことはありません。ま逆のものを買うこともあります。長年のデータ、天気予報、インフレ、デフレなど景気にも注意をします。前田 過去のデータは過去の売れ行き情報ですし、いかに売れていても来年売れる保証はないですからね。むしろファッション性のある商品は、まったく昨年の物は売れませんから、失敗するとギャンブルになりますよね。そうすると、常に感性を研ぎ澄ましておくことと、お客様の詳細な情報とそのための関係づくりが重要になってきますね。お客様の情報こそ重要ですね。それをせずに当社のやり方をまねて、シーズン前に販売している例も多くなり、せっかくの季節商品を売り逃している大型店もよく見かけるようになりました。大規模小売業が利益を出すための工夫と中小小売業が利益を出すための工夫は違うことを見逃してはなりませんね。そこに大企業経営の魅力と中小規模ゆえの魅力があるのですから。尾方 当店のお客様は、なじみのお客さんがほとんどです。従業員さんも30年くらい勤めている人もいます。量販店の3倍くらいの品質の良いブランドを選んでいますから、ギフトに使われます。ですから半年前にメーカーのカタログをお得意様に配布して、先に選定していただくことも多いです。だから売り残さない。冬物は6月に来るので8月に店に並びます。前田 プライスゾーンは、高・中・大衆価格帯と分けると、主にどのゾーンですか。尾方 低価格帯と高額価格帯は除いています。低価格帯は、量販店がいくらもありますから。しかも、低価格帯を買う人は高級品も買いますから。中の上、上の下のゾーンを意識しています。前田 どのような基準ですか。尾方 デフレの時とインフレの時では2倍くらい価格帯が違います。インフレ時は2万円、3万円のものがよく売れました。我慢することも大事です。現在のような景気の状況では子供服は、冬物は1万円以上のものもありますが、平常では今は、上は5,000円以上、下は3,000円以下で分けられるでしょう。ラーメンで満足しているお客さんには、中華料理やコース料理は売れません。量販店では自分で買って使ってもギフト商品にはなりません。お客さんの心理をつかんだ品揃えが大事です。35%以上の粗利を出そうとすると在庫は残せません。前田 当店は、量販店に比べると比較的高額な商品が多いですし、在庫が残ったら利益は吹っ飛びますからね。尾方 その通りです。初めの頃は売れ始めると追加注文をして、大失敗を何度もしました。夏物は1月から仕入れを始

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