中小企業支援研究vol1
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24中小企業支援研究 別冊『中小企業支援研究』創刊号は、全国の多くの中小企業関連の皆様にご覧いただき、多様なご希望やご意見をいただき深く感謝申し上げます。その中で、ご好評を得た内容の一つでありました、実際の経営者様にお話を伺った「経営者インタビュー」を別冊特集第1として発刊させていただきました。今回もどちらかといえば衰退業種と言われがちな前回の家電業界同様、写真業界、総合食品業界、酒販業界、子供服の流通業界に焦点を当てました。流通業は顧客と直接に接触する業界だけに、一つのものを大量に制作する製造業とは異なり、多様な欲望を持った個々の顧客に的確に対応していく必要があるという複雑性を持っております。エンドユーザーとしての顧客を扱うこれらの成功者たちの声、成果は製造業者の皆様にも多くのヒントを与えてくれると期待しております。今回お話を伺った経営者の方々は、一様に、過去の経営手法に過度に依存せず、昨日の延長線上にない市場の変化を的確に把握、あるいは先取りして、新たな活路を開き成長につなげていることが特徴でした。とりわけ共通することは、既存の顧客との関係性を大事にしながら、一人ひとりの顧客の質の高い生活や人生に深く関与していることです。そのようにして、信頼を得て、必要とされる企業人と顧客が強い人間関係で結びついていることがわかりました。これらのことは、大規模企業では実践しにくい、してもメリットの薄いノン・マス・マーケティングの経営ということができるでしょう。それだけに各企業の個別性はあっても、共通して中小企業だからこそできるビジネスモデルを開発、開拓し続けているお話でもありました。これらのお話を総合して、マーケティング戦略論そして消費者行動論に詳しい明治大学商学部教授の井上崇通教授にまとめていただきました。井上教授によれば、まさに、これらは従来の企業経営のマーケティング戦略の主流であった製品を中心としたG-Dロジックからサービスを中心としたS-Dロジックへの転換であるとの分析とまとめをいただきました。つまり、企業は製造業、流通業にかかわらず、製品・商品を前提としながらも、顧客の経験価値や製品・商品使用時の使用価値に重点を置き、顧客の満足を高いレベルで実現するために顧客と一緒になって(時にはその他の資源を統合して)価値共創をしていくことが重要で、そのための相互作用(サービスの交換)が行われているということでした。そして、そのようなことが実現するには、顧客との関係性(リレーションシップ)こそが前提となっているということでもありました。この関係性は、企業と顧客の信頼関係によって構築されるために、生涯にわたって継続される可能性が高いことも指摘されました。まさに人間主義に立った経営であるということもできましょう。この学術的にも裏付けられている経営者の生の声、成功の声が、小さくても強い中小企業、むしろ小さいからこそ強い、魅力的な中小企業にかかわる皆様のヒントにしていただくことが私たちのもっとも希望するところです。ご多忙の中、本特集号にご協力いただきました経営者の皆様、井上崇通教授にこの場をお借りして感謝申し上げます。『中小企業支援研究』編集委員長前田 進編 集 後 記

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