中小企業支援研究vol1
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1中小企業支援研究 別冊 Vol.1本機構では本年3月に『中小企業支援研究』を創刊しました。本機構は中小企業支援のための調査研究や情報提供を行うことを課題としており、中小企業、経済官庁、経済団体、大学や研究所の研究者等の間の情報のパイプ役となり、中小企業支援のための地域や全国レベルのシンクタンクとしての機能を発揮することを目指しています。同機関誌はその活動の一環をなすものとして刊行したものです。同誌は幸いに国の調査機関や企業関係者などから好意的反響を得ましたが、年1回の刊行では中小企業支援の役割を十分に果しえません。そこで年度の中間に別冊号を発行することとしました。中小企業においては、創業・新事業、経営改善、事業再生、事業承継などに対する支援が課題となっています。このためには、日本の中小企業の発展過程で蓄積された成功や失敗などの経験に学ぶことが必要です。この経験に関する文献的資料を集積し、それを分析するとともに、経験豊富な中小企業経営者に対するインタビュー調査を実施することが重要です。企業経営の歴史に関する研究はすでに大学研究者などによって行われていますが、中小企業に特化した経営史的研究はきわめて不十分です。そこで『中小企業研究』別冊は中小企業経営者等に対するインタビュー記録特集号として刊行することとしました。今回発刊することとなったものはその第1号です。そもそも本機構発足の動機となったものは、かなり多くの中小企業が倒産・廃業し、日本の中小企業の技術や豊富な経営情報が次世代に継承されなくなり、これに伴う日本の経済の将来に対する危惧が大手信用調査機関の幹部から我々に寄せられたことによるものです。この経営情報の蓄積は非営利の中立的研究を行い、情報を公開する大学研究所が担当することがふさわしいといえるでしょう。日本には中小企業経営に関する豊富な経験が存在しています。これを活用することが今後の日本の中小企業活性化に大いに寄与することとなります。中小企業経営者の経験は創業者等の親族に受け継がれることもありますが、その親族にとっても他の経営者の経験に学ぶことは必要でありますし、親族でない従業員が事業を承継したり存続会社の経営者となったりした場合にも、先人の中小企業経営の知恵に学ぶことは経営上大いに参考となるでしょう。中小企業支援は、国の中小企業助成策だけでなく、民間の中小企業経営経験の公開という方策ということによっても行われなければならないのです。毎年20万強の中小・零細企業が廃業しており、モノづくりや商品販売などの経営豊かな中小企業経営者が高齢化しています。中小企業経営者等の経験に関するインタビューは急がなければなりません。すでに『中小企業研究』創刊号では2件のインタビュー記録を掲載しましたが、これではインタビュー調査としてはきわめて不十分です。本号は前述のように経営者インタビュー特集として発刊するものでありますが、今後とも別冊は経営者インタビュー特集として刊行する予定です。本別冊が多くの人に読まれ、日本の中小企業、経済の発展に寄与することを本機構として念願しています。『中小企業支援研究』別冊発刊に際して千葉商科大学 経済研究所中小企業研究・支援機構長商経学部教授齊藤 壽彦

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