中小企業支援研究vol1
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3中小企業支援研究 別冊 Vol.1松崎 写真館をつくるにあたって、衣装や美容室が必要だと考えました。最初は振袖を3着購入して始めましたが、今では400点近くになりました。美容室は、私は美容のことは全くわからなかったので、当時は青葉台まで美容の先生をお迎えに行っていました。そうこうするうちに人気が出て七五三や成人式の撮影はえらく並んでしまうようになりました。そういう状況では撮影時間が5分程度になってしまいます。これは僕の考えとは違うので前撮りを始めました。前撮りの撮影は無料で提供しました。こちらの都合ですから。前撮りはゆっくり撮影できるという触れ込みで。例えば、七五三の三歳の場合の前撮りは、二歳半くらいで来店しますが、そうすると子供さんですから泣いたりするわけです。泣いてしまったら別の機会に来てくださいね、とおすすめします。そうして何回も来ていただくうちに人間関係ができてきて「いい写真」が撮れる。写真館はいい写真を撮るためにあるわけだから。成人式も前撮りを始めて、誕生日に成人式の撮影をする「自分だけの成人式」を提案しました。前田 なるほど、お客様の立場で考えて新しい写真館を作り上げていったのですね。私たちが考えがちな売り手発想の起業や新規事業開発ではなく、買い手発想、顧客志向であることがよくわかりますね。松崎 ゆっくり撮影できるということで。前撮りを始めて3年目からは軌道にのり、七五三は7月にはいっぱいになるようになりました。この方法が全国に拡がるのに3年かからなかったのではと思います。式場内で撮影できる結婚式場を開発前田 加速度的に成長していく姿が想像できます。松崎 今でもやっている「写真だけの結婚式」は、当時は写真だけでしたが、それだけでは限界がありますから、チャペルを建てました。これには10年かかりました。前田 私もこのころ会長と知り合いになりましたが、それは、どのようなコンセプトだったのでしょうか。松崎 まず、前撮りが前提で、一般の結婚式場と違うのは式場内に撮影する背景があるということです。式場内に南欧風の景色をとり入れて、どこでも写真が撮れるようにしたのです。前田 このチャペルのパトリック・キソ・ガーデンはいつできたのでしたか。松崎 2002年4月オープンですね。この時もブライダルのことが良く分かっていてオープンしたのではなく、娘の結婚式を第一号にスタートしました。みんなで勉強しようと。当時は婚礼が6カ月から1年もかかると思いませんでした。予約、打ち合わせ、挙式までで一年。最初はレストランも設けようとは思っていませんでした。写真を撮ることばかり考えていましたから。当時はこのような施設にレストランがあるところはなく、ノウハウを持っている人もいませんでした。それでは第1号でやろうかということになって、フランスまで、そこで活躍中のシェフを面接に行きました。地域産業人とパトモクラブで連携前田 全て日本初をやり続けてこられましたね。だからこそ、どこより早くお客様の気持ちをとらえることができたのですね。ところで、地域の皆様と作っておられるパトモクラブについて伺えますか。松崎 20~30年前は、町田のホテルで年間800組くらいの結婚式のお客様を集めていました。薬師スタジオも300組ほどありました。ところが競合が増え、それらが横浜、表参道などに流出するようになりました。この状況に危機感を覚えて、町田を何とか盛り返したいと考えてパトモクラブをつくり、加盟店を募って共同宣伝を始めました。今年で6年になります。勉強会もしています。前田 私も第1回の研修講師として参加させていただきました。ところで基本的なことですが、薬師スタジオの名前の由来を教えて下さい。松崎 それは、写真館としては後発だったものですから、薬師池の近くにあったので、目印として薬師スタジオにしました。「薬師池の近くだよ」ということで。前田 好きな名前をつけてしまいがちですが、お客様にわかりやすいということが決め手ですね。今店舗は何店舗になりましたか。松崎 3店舗あります。この他にドレスショップを1店舗、M&Mという店舗です。しあわせ色のストーリーをつくる前田 会社の基本的な情報を伺いたいのですが。松崎 「しあわせ色のストーリーをつくる」という理念を持っています。しあわせ色のストーリーとは、薬師スタジオでいうと、妊娠写真を撮ります、おなかが大きくなった写真ですね。その前に恋人写真、婚約写真、恋愛写真、というのがあって、これらは無料にしています。お越しいただければ次に繋がる。結婚して子供が産まれたら写真、成長する過程で写真、二人目ができたら写真。また、結婚記念日に写真を撮りましょうともいっています。結婚した人はケーキや花を贈られるかもしれませんが、写真に気づく人は少ない。ところが、「食べ物は消えていきますが、写真は毎年積み重なるとそれが宝物になるよ」、というのが僕のやりかたなのです。パトリック・キソ・ガーデンも、婚礼の写真から繋がっていて、「赤ちゃんが生まれたら遊びにきてね」と、クリスマスに皆様と同窓会を開いています。たくさんの方に来ていただけて

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