中小企業支援研究vol1
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4中小企業支援研究 別冊いて、小さなスタジオですが100人くらい来ます。大繁盛です。子どもたちは無料なので儲かりませんけど。今ここを会員制にしていまして、ここで婚礼を挙げられた方は会員、食事をされた方も申し込めば会員、薬師スタジオで写真を撮られた方も申し込まれたら会員。今は8,000組を超えているので、一家族3人として2万4千人が会員である計算になります。そして、会員の皆様が遊びに来る場所、写真館でありたいと思っています。婚礼を挙げた方は、薬師スタジオで5年間結婚記念日の撮影が無料になっています。6年目からお金をいただくのですが、しあわせ色のストーリーにつなげていこうという考えからです。前田 ご縁づくりとでもいうのでしょうか。何のご縁もないところにビジネスは存在しませんからね。松崎 家族みたいに思ったらいいのではと位置付けています。色々な悩みごとなどを訊くこともあります。前田 家族ですか、最近絆とよく言いますが、もっと強い関係ですね。松崎 利他の精神というか、他の人を幸せにすることによって自分の幸せに繋がると、売上や利益は目的ではなくて結果です。目的は人を幸せにすることだよと、スタッフに言っています。前田 実際お客様に接するのはスタッフの皆様ですからね。松崎 人間関係は難しくて、口で言っても伝わらない。それが原因で社員が間違える事はたくさんある。ちゃんと話せばわかることなのに伝わってなくて、間違いが原因でやめていくことがあったらそれは不幸なことだから、しあわせ色のストーリーという旗印のもとに業務があるのだよ、という話をしょっちゅうするようにしています。前田 社長は今どなたが。松崎 社長は2013年に息子に代替わりしました(松崎太郎氏、34歳)、シモン(パトリック・キソ・ガーデンの社名)も2015年に長女に譲ろうと考えています(松崎彩氏、38歳)。感動づくりに手を抜かない前田 ところで、苦戦が続くカメラ業界のことを伺いたいのですが。松崎 技術の高い写真館はたくさんあります。でも、彼らは先生で、それに流されているところがあるのではないでしょうか。写真館の先生は自分が日本一だと思っています。色々と大変な賞をとっているし。でもお客さんの方を見ていない。前田 お客さんの方をみていれば、デジタルの世界に変っても残っていけるということでしょうか。松崎 そう、そして、こうやりたいという思いがあったほうがいいでしょう。僕の場合には七五三の展示会をやりました。今度はファッションショーも考えています。そこで利益を得ようという考えではなく、街の話題づくり、振り向いてもらう努力ですね。黙っているとそのまま廃れていってしまいますから。前田 デジカメの普及などについてはどのようにお考えですか。松崎 カメラの普及は、使い捨てカメラからデジタルカメラに移っていったのですが、誰が撮っても写るようになりました。ただそれをプリントにする人が少なくて、携帯で写してもプリントする気はないと思うのです。僕の写真館の考え方は、「古くていいものを残す」というものです。例えば、時代と共に作業が簡単になっていきますが、無駄な作業が削られていって、味気のないものになっていくわけです。僕は、最近日本髪の研究会をつくりました。今は洋髪が中心で、これは簡単でセンスがちょっとあればできるのですが、日本髪が出来る人がいなくなっていることに危機感を感じたからです。写真も同じで、写真の撮り方も100年プリントを使っています。今の写真館は長持ちするプリントではなく、多くは3年から5年で褪せていくような、その時が良ければいいようなプリントです。粗製乱造です。僕はずっと(死ぬまで)持続するのが、しあわせ色のストーリーだと思っているので、全く考え方が異なる。食品の偽装が問題になりましたが、わからなければいいのかと、憤りを感じています。僕のレストランでは、こだわって神戸牛のA-5最高級を使用していますので。写真の100年プリントは100年たたなければ分かりませんが、そのような気持が大切だよと毎日のように言っています。仕事をする上では心が大事だよと、言っています。ところが心を省略してしまって、ロボット化していくような時代で、特に僕は心を叫んでいく必要があると思います。世界的な課題だと思っています。前田 私たち人間はハッピーのために生きている、人間の心を省くことはハッピーではありませんね。子育てを省く人はいません。松崎 僕のところでは婚礼も写真も手間を省かない。感動に手を抜かない。参列者にも感動してもらうには必死にやらなければ伝わらないと思うのです。前田 ビジネスユースの写真もかわりましたね。松崎 はい、たとえば、工事現場ではカメラマンは不要になりましたね。広告の世界もカメラマンは不要になっています。コピーライターなどの企画者が撮ってそれでOKになっている。写真の価値が変ってきています。私たちはお客様に写真館にわざわざ来て撮ってもらうのですから、どのような写真が感動してもらえるかを考えていかなければならない。他の写真館にないものを提供していくことを繰り返してお客様を繋ぎとめていくことが必要だと思います。前田 ところで、会長の精神に一番影響を与えたものはなんでしょうか。松崎 昭和を代表する経営者の松下幸之助さんが「素直」

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