中小企業支援研究vol2
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中小企業支援研究 別冊 Vol.211開発しました。それまでなかった細くて軽いものでしたので評判になり、学校関係の仕事が増えました。前田 そのようなことで基礎を築かれたのですね。渡辺会長 その後、金型企業用のばねを企画しました。当時金型業界ではウレタンゴムを使っていましたが、オイルショック後高騰した際に、それに代わるプレス金型のばねを開発しました。大手のM社さんとも提携し共同開発したこともありました。 その後、ばね需要が拡大し自動車の車高用のばねの受注が多くなりました。前田 大きな成長期を迎えたわけですね。渡辺社長 そのような経過で、中国の青島に独自工場を初めて作りました。前田 いよいよ海外進出が始まりましたね。海外に進出するとなるといろいろなご苦労があったと思いますが、いかがでしたか。渡辺社長 文化も違いますが、日本の商慣行と異なることが多くございますので、多様な企業と連携し情報収集し、安全のための努力、品質に留意するなどの工夫をしてまいりました。 特に品質の問題ですが、JIS規格はアジアだけの規格ですのでISO規格に合わせる必要がありました。ミリ規格では通用しませんので、アメリカのB社と共同開発のためのインチ規格にする必要などが発生しました。前田 いよいよ世界戦略が始まりましたね。国際的な取引ではリスクも多いと思われますが、どのような工夫をされていますか。渡辺会長 為替の問題が大きいと思います。当時はアメリカ、イギリス、シンガポールなどとの取引がありましたので、為替差損で赤字になることもありました。前田 為替予約などはしていないのですか。渡辺会長 現在はやっておりませんが、2年契約で安全を期していました。中国を起点にスタートして拡大してまいりました。現在は加工貿易のみで、仕掛品を輸入するだけにしており、販売はしておりません。工賃だけの支払いで、仕上げ、検査は当社で行っております。日本人の人件費は高くついてしまいますし、日本製だと高いイメージがつくので中国での生産を開始しました。卓越した技術・ノウハウで成長前田 先ほど製造担当の梅津様に工場内をご案内していただきました。ショットピーニングはまさに子供のころに、近所の鍛冶屋さんがトンカチで金座をリズミカルに叩きながら、真っ赤な鉄を鍛えている姿を思い起こしました。渡辺会長 そのとおりです。鉄の鍛錬ですね。前田 日本の職人技が機械化され、近代化されていることに感動します。御社の工場を拝見していますと、他社にない卓越した技術の宝庫のように感じました。お話しいただける範囲で、御社の独自性の高い技術、ノウハウについてお伺いしたいと思います。渡辺社長 副工場長がお案内いたしましたが、ここには私どもの歴史を積んで開発した技術がいくつか存在します。 耐熱ばね、矩形のスーパーばね(角断面)、自動車のサスペンションのばねなどは苦心して作り上げた製品です。前田 どのようなものですか。渡辺会長 21世紀になってから様々な産業が発展し、私たちへの要望も高度になってまいりました。そのお役に立とうと努力した結果出来上がった製品といってよいと思います。渡辺社長 国内外の鉄鋼業や基幹産業を支える溶鉱炉の溶けた鉄の温度は、1600〜1800度もあります。高温に耐えられる耐火物、それを支えるばねは溶鉱炉にとって必要不可欠です。耐熱ばねは溶けると事故になりますので、優れた品質と精度が求められます。そこで、事故の起きないような特殊合金を使用した耐熱スプリング・ばねが必要です。S社さんなどの溶鉱炉に使われるものや耐火物を生産されている九州のK社さんへ納めさせてもらっています。私どもの製品は安全性が高く、それを評価されおかげさまでここまで無事故で成長してきました。 私どもの製品はばねですから、他社様の製品に埋め込まれて価値を発揮してまいりました。前田 お客様のそのまたお客様のために、他社と連携しより良いものを作り続けてきたのですね。どのような企業でもすべてのニーズにこたえられる技術やノウハウ、つまり資源をすべて有している企業は一社たりともないといわれていますからね。渡辺会長 ばね一筋の意義がそこにあります。前田 その他の商品にはどのようなものがありますか。先ほど工場で拝見した自動車の赤いサスペンションなどはおしゃれな色で、若い人にも人気のありそうな製品で当社のばね加工技術を支えるコイルフォーマ―

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