中小企業支援研究vol2
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中小企業支援研究 別冊 Vol.212した。渡辺社長 おっしゃるとおりです。単に製品の品質だけでなく、ファッション性もエンドユーザーの皆様には重要な価値ですから。前田 製品を使用する段階でのお客様の求める価値は個別性が高いですから、ばねにもその個別性を求められると、たとえば大手の車メーカーでもそこまでは行き届きませんね。ところで、ばねというと丸いばねしかイメージにありませんが、御社のばねは矩形のものですね。渡辺会長 当社製品の大きな特長です。薄型矩形ですからばねの螺旋の数が増え、スプリングの弾力性が強くなります。前田 御社製品の大きな特徴ですね。品質第一ですが産業財として産業のニーズに対応していくために、市場の変化にも留意をされていますね。渡辺会長 ニーズに対応してお客様から「多摩スプリングに頼めば何でもできる、なんとかしてくれる」と思われることが重要だと思います。他社でできないものを多く持っています。下請けではどうしても親企業とともに連鎖倒産に巻き込まれがちですので、メーカーとしてスプリングではトップを目指してきました。コスト管理と納期管理を重視すること、お客様の目の前で作って見せられることは、とても重要なことと思っています。前田 まさにモノづくりの喜びがそこにあるわけですから。メーカーにこだわる理由はそこにもあるわけですね。下請けで終わらないために研究開発に力を入れてきた前田 創業以来、スプリング一筋にばねづくりを通して国際社会に貢献するということを目指していらっしゃるわけですが、御社のモノづくりの理念を支えているものは何ですか。渡辺会長 先ほども申し上げましたように、創業以来、「やれますか?」と頼まれて、断ったことがありません。そのことが口コミになってここまで来られたのだと思います。下請けで終わることなくメーカーとして成長したかった、その思い一心でここまで来ました。前田 創業時代からの職人としてオリジナルをつくる精神を持ち続けてこられたこともわかります。しかし、それだけに下請けにない苦労があったのではないでしょうか。渡辺社長 まじめにやることとチャレンジ精神は忘れません。メーカーを目指してきましたので研究開発費がかかります。しかも、すべての製品が日の目を見るわけではありせんし、保証は全部自社負担という場合が少なくありません。これらは当社の弱点といってもよいでしょう。安定化を図るために工夫をしてきました。平成24年に東京都振興公社のモノづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金を活用しました。井之上 会議所にも製造業の皆様にお使いいただけるものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、無担保・無保証人の経営改善資金のような支援策がありますので、ご利用いただきたいと思います。渡辺会長 研究開発は当社の経営のコアですので、このような支援はありがたいことです。前田 この研究開発力と何でも引き受けるという気持ちが御社の成長の原動力となっているのですね。渡辺社長 開発力は当社経営の生命の根源です。会長と結婚後も、財務を担当してきましたが、開発のすべてが成功するわけではありませんので数千万円がゼロになる場合もありました。下請けにならない一心でしたからできました。ゼロでも頑張るつもりでした。こちらがダメでもこちらの技術がある、という気持ちでした。このようにして、大きな自動車会社からもばねの受注を頂くようになりました。私は経理を担当しながら、踏ん張る力が大事と思ってまいりました。前田 言えば一言ですが、やるのは大変です。渡辺社長 当時はお金がなかったのですから、何でも聞いてやりました。本当にゼロからでしたから踏ん張ることを決断していました。前田 この研究開発力への誇りと技術力、営業力で苦難を乗り越えてこられましたが、どのようなご苦労がありましたか。渡辺社長 リーマンショック後でした。お借りしていた施設費が負担になり日参して下げていただきました。「本当に努力して頼みに来ているか」と言われたりしましたが土下座するようにお願いいたしました。大手のメーカーからは、海外をやめて専属の下請けになるようにと言われたこともありました。しかし、何としても元に戻ることや、下請けにならない一心でここまで来ました。更なる発展を目指した組織力の強化前田 昭和34年の創業ですからすでに半世紀を超えた当社独自のスーパーばね

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