中小企業支援研究vol2
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中小企業支援研究 別冊 Vol.25「仲間」とのコミュニケーションで会社を強化柴田 若い職人も含めて、定着されていますか。中䑓 そうですね、比較的長いですね。続かない者は、一年経たないで辞めていきます。それはだいたいわかります。採用時には必ず、『当社の雰囲気が合わなかったらやめた方がいい』と言ってあげます。当社のような中小企業では、私と合うことと、この会社と合うことが重要な条件です。この条件に合致しなければ、絶対、一緒に仕事は続けられないと思います。仕事自体が「嫌だ」「辛い」は何とかなります。お互い気持ちが通じ合っていれば、心のケアはできます。 私は時々、社員だけでなく、家族がいれば家族も一緒に食事に行くようなコミュニケーションをとるようにしています。また、忘年会は家族全員を招待しています。ベテラン社員は孫連れで、若い独身社員は彼女連れでも歓迎です。年末の忘年会では、社員と家族・関係者とのコミュニケーションを図ります。このような家族経営の会社では、この雰囲気に溶け込めず、「家族」になれない社員は続けていくことはできないでしょう。頭の良い悪いは二の次で、まずはそこが大事です。単なる社員というよりは「仲間」ですが、私は、その「仲間」がいる会社が一番強い会社だと思っています。海外展開を視野に入れつつ、地域社会に貢献林 私からも質問ですが、海外に行かれるようですが、それは日本文化を紹介するのに留めてらっしゃるのか、チャンスがあれば何か仕掛けてみたいのかお考えは。中䑓 チャンスがあれば売りに行きます。7月6日ドイツのローゼンハイムに市川市長や会議所の会頭・副会頭、市川市役所の文化交流部長と一緒に行ってきます。林 日本文化を紹介しながら商機をうかがう形ですか。中䑓 何をするのか、それはわかりません。まずは行きます、取り敢えず行ってきます。当社から売れるものは、なかなかないと思います。しかし、私は、行かないことで何か損してしまったと感じるよりも、行って後悔した方が良いのではないかと考えます。また、市長や同行される皆さま方と、6日間一緒に旅をするという機会も今後おそらくないでしょうから、そのような貴重な機会を活かしたい。遊びに行くのではなく、先方との経済交流ということで100人ほど集まるそうです。そこで新たに、「人」と出会えることにも期待しています。社内でウロウロしているより、何らかの可能性を求めて行くことの方が、社長である私の役目でしょう(笑)。齊藤 先ほど子供たちを見受けましたが。中䑓 学校単位で見学に来てくれます。今日は小学校3年生の授業に、神輿を持って呼ばれました。市川市内の小学校3年生は、だいたい見学に来てくれます。林 社会科見学のコースですね、社会貢献になりますね。柴田 小学生のうちから伝統工芸に触れる機会は、今やめっきり少なくなっていると思いますから貴重ですね。中䑓 使命というか、地域にはお世話になっていますから。先日、行徳小学校の卒業文集で6年生の男の子が『神輿屋になりたい』と書いてくれたようです。この地域に住んでいて、お祭りが好きで、このお神輿が大好きで、将来はお神輿を作ってみたいっていう夢だそうです。私達社員にも励みになります。そのような「心の支え」が地域にあるので、とても助けられますね。柴田 地域に根差した企業ということですね。中䑓 先日行徳祭りがあって、そこで担ぐ神輿を2台製作して、レンタルでお貸ししました。若干売上が良かった年に、このような用途の神輿を製作すれば、職人の手も空かず無駄にもならないので取り組んでいます。「ブランド価値向上」で職人を守り人材を育てる齊藤 最後に、今後の課題をお聞かせ下さい。中䑓 何より当社のブランド価値を上げることで、どう上げていくかということが一番の課題です。齊藤 そこがなかなか難しく、大変だと思います。中䑓 難しいです。ただ、それを上げないと、最終的に私が思っている「職人を守りたい、人材を育てたい」ということができません。とにかく、大事なのは人材だと思っています。この会社は、技術をもった職人がいたから生き残れ、助けられてきたのです。今後の事業承継においても、私と同じような思いをもった後継者に繋げていくためにも、人材を残して技術を継承するということが大事です。世の中人間しかいません。お客さまも人間で、社員も人間です。私はそこに尽きると思います。人が全てなのです。齊藤 本日は長い時間、どうもありがとうございました。■企業概要会社名………有限会社中台製作所住所…………千葉県市川市本塩21-3創業…………嘉永元(1848)年。2000年1月に(有)中台製作所に組織変更事業内容……神輿・仏壇・仏具の製作販売と修復・復元従業員………18名資本金………500万円売上高………約1億9000万円(平成14年度)■インタビュア 齊藤壽彦・・・中小企業研究支援機構長■原稿執筆   柴田多敏・・・中小企業診断士   (千葉商科大学大学院中小企業診断士養成コース修了)■Photo.林 幸恵・・・経済研究所

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