中小企業支援研究vol3
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中小企業支援研究 別冊 Vol.311確保、納期の厳守といった苦労の連続でした。一仕事終わると全く仕事が途切れてしまうこともあり、父に言わせれば「日照りと洪水の繰り返し」の状態でした。こうした下請け企業でなく、「自力でつくり、販売できる最終製品のメーカーになるには、どうしたらよいのだろうか」と試行錯誤を重ねました。そんな折、古いお客様から粉砕機の製造依頼がありました。取り扱ってみると粉砕機というのは価格も何千万円単位で中小企業にとって手離れもよく、継続的な受注も見込めるため、粉砕機づくりに絞り込むことになりました。大塚 粉砕機づくりの技術は、欧米が先端を行っていると聞いておりましたが、どのように技術を導入されたのでしょうか。芦澤 私の父はデンマークに2年間修行にゆくなど、語学に堪能なことから単身でドイツに乗り込み、当時世界を代表する2大メーカーと言われたドライス社とネッチ社との提携を成功させました。技術提携と言っても、設計図をもらって、それを基に日本で機械をつくる許可を得るといった程度でありました。ただ、これを契機にアシザワが独自に粉砕機を作り販売するメーカーとして第1歩を踏み出したわけです。特にネッチ社との提携は1984年のことですので30年以上わたっておりますが、近年では、アシザワの湿式粉砕機ビーズミルは“細かくするという微細化技術において”本家のネッチ社を陵駕するまでになっております。粉砕機はより細かく、ナノの領域を達成することで新製品の創出に貢献大塚 粉砕機はどこまで微細化できるのでしょうか、また、その用途と生産形態について教えてください。芦澤 粉砕のイメージはコーヒー豆を砕いたり、石臼でそば粉を作るのと同じ原理です。我が社の扱う粉砕機はもっと細かい分野です。つまり1mの10億分の1のナノの世界まで微細化することが出来るのです。細かくすることで廃棄物として棄てるという発想ではなく、もっと良いモノをつくろう、あるいは高く売れるモノを作ろうというお客さまのために開発・製造をしています。鈴木 粉砕機の用途と生産形態について教えてください。芦澤 粉砕機の用途はいろいろあります。例えば、光沢のある自動車ボディ用の塗料ですとか、高価な原料を粉砕して高い有効性を求める医薬品、肌を美しくする化粧品、鮮やかな色彩を追求するパソコンのディスプレイなどです。太陽光発電用の太陽電池や食品関連等もあり、あらゆる業界に関連を持っています。例えば、タッチパネルのように10年20年前には、無かった製品がいつの間にかナノの技術と関連して製品化されているのです。鈴木 発注者側はそれぞれ粉砕したい原材料が異なると思いますが、その場合、どのような生産体制を敷くのですか。芦澤 全く前例のないものを新しく作り上げるのではなく、体制は受注生産ですから、いわば紳士服のセミオーダーの感覚で作り上げていきます。部品の材質を変えたり、回転する速度を変えたりします。その意味では共同開発に近いかたちです。お客様の厳しい要望にあわせて行く場合でも、ただ言われた通りでなく機械メーカーとしての専門性と経験をふまえて最適な解決策を示すことが必要なのです。大塚 製品を納品して終わりでなく、実際に稼働させて納得のいくような対応が必要なのですね。芦澤 おっしゃるとおりで、粉砕機というものは、部品が摩耗することがあります。そうならないよう部品を交換し取り付け作業をするわけですので、あとあとの面倒がかかるのですが、それを厭わずに行うことで信頼関係が築かれます。評判の悪い時期もありましたが、今ではサポート体制を充実させ24時間以内にアクションを起こすという体制を取っています。創業100年を契機に新創業により 大改革を図る鈴木 御社の歴史の中で、昭和50年代、下請けから機械メーカーへの転換がありましたが、芦澤社長の代になって創業100周年を迎え大きな改革を実践されたと伺っておりますが、どのようなものでしたか。芦澤 経営者が変わる度に大きな改革を実施してきた結果、今日があると思っています。私の入社した平成3年ビーズミル(ナノ粒子分散機)

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