中小企業支援研究vol3
22/36

中小企業支援研究 別冊 Vol.320 強い因果関係があるという推測の根拠は、図5に示した。すなわち、起業態度を有する人とそうではない人では、起業活動を行う割合がまったく違う。例えば、ロールモデル指数に該当する人では14.0%が起業活動を行っているのに対して、そうではない人では2.0%に過ぎない。知識・能力・経験指数では、その差はさらに拡大し、起業態度を有する人では19.9%が起業活動を行っているのに対して、そうではない人の割合は1.9%である。 このように考えると、起業活動を活発化するためには、①起業態度を有する人をいかに起業活動に導くかというアプローチと、②起業態度を有する人をいかに増やすかというアプローチをうまく使い分ける必要があることがわかる。そして、このような分析結果から、筆者は起業家教育や訓練の重要性を主張してきた。300万人近い起業家の存在 「しかし、それでは全然間に合わない」という厳しい意見もある。起業態度に働きかける方法は、教育や意識改革のようなことが含まれるので、効果が出るまで時間がかかる。現在、すでに存在する起業家の力をさらに生かすことが求められているのだということである。 確かに、わが国の現状をみると、起業活動のために具体的な準備をしている人と起業後3年半未満の若い起業家の合計は約280万人と推計できる(図6)。これはGEMのTEAの定義に基づいた数字であり、具体的な準備をしている人が含まれている点に注意が必要であるが、この数字は決して小さなものではない。 ここでも、首都圏をはじめとする大都市圏への集中は起きているものの、最も少ない推計結果となった北関東でも8万人近い起業家がいる。 彼らや彼女たちがその能力を十二分に発揮し始めれば、地方も変わってくるに違いないし、そのような事例は全国いたるところで見ることができる。 日本再興戦略の事例の中にも取り上げられた高知県馬路村のゆず関連商品の事業や同じ四国の徳島県上勝町の葉っぱビジネスなどは超有名であるが、他にも、沖縄県読谷村では、廃墟化寸前であった大河ドラマ「琉球の風」のロケ地跡を、体験村に変えることで、毎年20万人近い観光客を集めるスポットに変身させた。ワインと言えば、ブルゴーニュやボルドーのように年間降雨量が500㎜〜800㎜程度の場所を想像するが、宮崎県都つの農町の年間降水量4000㎜を超えている。しかし、ここで作られる都農ワインは国産ワインの中で非常に高い評価を受けている。 これらの事例に共通する点は、素晴らしい起業家が、これらの事業の先導役になっていたということで(千人)資料:図3に同じ注)2013年時点の人口推計値に、各地域のTEAを乗じて求めた数字である表1 地域別にみた起業態度の水準(日本)(2009〜2014年)資料:図3に同じ注)起業態度の水準の測り方は、次のとおりである。起業家や起業活動が身近なものであるかどうか(ロールモデル指数)は「過去2 年以内に新たにビジネスを始めた人を個人的に知っているか」という設問、起業活動や事業機会への関心の高さ(事業機会認識指数)は、「今後6 カ月以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れると思うか」という設問、起業活動を始める準備等(知識・能力・経験指数)は、「新しいビジネスを始めるために必要な知識・能力・経験を持っているか」という設問に対して「はい」と回答した割合を使っている。図5 起業態度の有無別の起業活動水準(日本)(2009〜2014年)図6 起業活動の地域別の分布(日本)(2009〜2014年)資料:図3に同じ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 22

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です