中小企業支援研究vol3
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中小企業支援研究 別冊 Vol.325生活援助を受けていた。 入院1か月前、つたい歩きはできたが、寝たきりの状態であった。その後、仙骨部の強い痛みのため、Y病院に緊急入院、その際は食事もできず、尿路感染、腎不全なども併発していた。Y病院内では医師、看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、理学療法士、栄養サポートチームなどによる病棟カンファレンス(図表3:病棟conference)が行われ、必要な処置が検討された。様々な処置の甲斐があり、病状は安定した。 本人は自宅に帰りたいとの強い希望を示したが、つたい歩きも難しく、一人暮らしでの退院は困難と判断された。入院中に退院調整会議が行われ、在宅の可否評価と介護区分をより重い区分への変更申請をケアマネージャ(介護支援専門員)が行った。在宅診療所の医師が病状を確認し、疼痛コントロールが可能なら在宅可能と判断し在宅介護サービス事業所と連携し必要なサービスの検討も行われた。Sの妹夫婦は持病で身体介護はできないが、Sへの訪問は可能であることを確認し、退院前合同カンファレンスで本人の要望を実現するべく退院となった(図表4)。(3)多くの地域では患者を中心とした統一性のあるサービス提供は今後の課題 協議会では、Sの事例のように、協議会内の各事業所の医療、看護、介護、リハビリ、栄養などの各分野の専門家が連携して、患者が望む生活ができるよう支援をしている。本研究に当たって退院調整会議(図表3)に参加したが、法人の異なる病院の病棟看護師、病院の地域連携室看護師、在宅支援診療所看護師、老人保健施設のソーシャルワーカー、介護福祉士、居宅支援事業所のケアマネージャなど20数名が参加した退院調整会議は、患者リストに基づき、患者情報を共有し、個々の患者の課題を明らかにし、その上で、どの事業所と事業所が担当し、連携はどのようにするかなどを効率良く協議する場となっている。2. 関係性マーケティングを支えるマネジメントシステム(1) 24時間365日の医療・介護ネットワーク 協議会には、医療・介護関連の30事業所があり、24時間365日の医療介護のネットワークを形成(図表5)している。協議会の運営は、各事業所の取り組むべき課題の実施判断ができ事業所内で必要な指示ができるメンバーで構成された運営委員会が担い、事業方針の合意形成、共通課題の検討、活動交流等が行われている。図表5 24時間365日の医療・介護ネットワーク(出所)図表:病院提供資料に基づき筆者作成(2)医療・介護分野での高い地域シェア 介護事業所の利用者割合は、当該地域の総人口、在宅療養患者数などからの協議会の推計によると、訪問看護が約4割、訪問介護が約3割の高いシェアを獲得している(図表6)。長年の取組みによる地域の信頼は高く、協議会の患者組織(友の会)10は病院周辺では人口比10%超の高い加入率である。図表6 医療・介護における高い地域シェア(出所)図表:病院提供資料に基づき筆者作成  10 協議会の患者組織(友の会)は1967年に病院立ち上げの資金を募ることを目的に立ちあがった(『地域医療・福祉の50年』ドメス出版2001年)。患者組織の方々の中には「困った時に頼れる病院」「私たちの病院」という意識も強く、現在では協議会の丁目別の加入率では人口比(世帯比ではない)で12%以上の高い加入率の丁目も存在する。

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