中小企業支援研究vol3
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中小企業支援研究 別冊 Vol.35れぞれ異なる専門店を展開していこうと考えています。このような店舗の専門性を自主的に実現してもらうには、世界一思いやりを持った社員、働き甲斐をもって、他社には負けたくない、負けない人財が必要と思っています。750人もいる会社を私一人で動かしていくことは困難です。しかし、社員のことは千人を超えても全員のことを知っていたいと思っています。そして、自分で志事や目標をつくり、自分の力を発揮していってほしいと思っています。前田 これが御社のコンピタンスになりますね。重永 はい。店舗の運営と管理はもちろん商品の開発、生産、販売からコールセンターまでのすべてを遂行できる人財です。前田 具体的にはどのようなことを考えていますか。重永 ハーブ、アロマテラピーに関するモノやコト、在庫のアウトプットの水準を高め、どこにも真似できない事を、深さ、広げ方を考えて、さらには製品が使われるシーンにもこだわっていきたいと思います。営業においても奥行きと幅を持たせていきたいと思っています。単に売上拡大を目指すのでなく、社会貢献度、社会影響度という尺度を重視していきたいのです。前田 具体的には社員の皆様には、どのように表現されているのですか。重永 まずは売上のノルマがなく、今年はこうしたいという目標を各自で立てるようにしています。社員からは、任せてもらえるから楽しい、自分で志事や目標を作っていくから面白いといわれます。前田 このような発想はどこから生まれたのですか。重永 私も大規模小売業に就職し、SV(スーパーバイザー)になるためのオーナーの苦労を体験するトレーニングをした経験があり、その経験から、社員、お客様、生活者の皆様と共に作り上げる価値観が重要だということを実感しました。前田 その経験が社員にまかせる経営を実践されるきっかけになっているのですね。重永 自分で目標を作る、志事を作る、それから出た利益の3分1を決算賞与という形で還元するということを行っています。そのために、社員と1対1で繋がっていくことが重要で、一人の人間としての可能性を大事にしています。顧客よりまず社員を第一に考える家族経営企業ですが、社員がハーブ・アロマテラピーの文化を創造し、原材料の輸入から、製造、卸売り、小売り、スクール経営に至る全てを自前で行えることが当社の競争優位になっているのだと思います。前田 商売ですからお客様のことは大事ですが、そこに関わる従業員の皆様の働き甲斐が重要ということですね。重永 社員全員を家族だと思って、一人一人が自分の事として働いて、幸せになってもらうための経営を目指しています。規模が大きくなっても、人間的な温かみのある経営を重視したいと思います。前田 最後になりますが、今後の新規事業などについても教えていただけますか。重永 海外展開についても考えています。以前、台湾に展開しましたが、商慣習が全く異なり驚くことが多くありました。賃貸の保証金の問題、そして販売に関しても1年の中のある時期に集中して、値引きで大量に売る。数週間で1年間の売り上げの大半を売ってしまうなど驚くことが多くありました。場所や、商品についても慎重に考えなければなりません。前田 そういう判断にも社員の皆様のお力が発揮されますね。どのような点に留意されていますか。重永 利益をいくら上げるかということよりも、上がった利益をどうしていくかということの方が大事だと思っています。社員全員であげた成果である利益の3分の1を業績連動賞与として還元し、利益が上がれば上がるほど経済的にも豊かになり、働き甲斐が高まっていくということが重要です。また、3年に1回、社員の意識調査をして問題がある場合は早めに手を打つようにしています。手を打たないとモチベーションが下がります。前田 業界のパイオニアの役割も果たしていますね。重永 きちんとした業界をつくっていくことも私たちの使命と思っています。業界の発展のために、介護、予防医療、環境芳香、食品関連の導入等も考えてまいります。前田 どのような活動をされていますか。重永 公益社団法人日本アロマ環境協会、NPO法人日本メディカルハーブ協会、スリランカの協力で日本アーユルヴェーダ―普及協会(JAPA)などを設立し、そこを通じた活動を行っています。自社だけでなく、世界や社会とつながっていきながら正しい形で普及させていかなければ業界全体の発展につながりません。前田 夢が広がりますね。重永 私たちは、自然の恵みを人類、社会のために活かす生活科学の開発を続けていきたいと思っています。前田 時間がいくらあっても足りないくらいですね。重永 そうですね。生涯現役のつもりでまいります。私自身もこの志事を社員たちと楽しみながら、ともに楽しい人生を過ごせたらと思っております。前田 本日は貴重なお話を、ありがとうございました。■企業概要企業名………株式会社 生活の木 本社所在地…〒150-0001東京都渋谷区神宮前6丁目3番8号オフィス……〒150-0001東京都渋谷区神郡前6丁目12番20号J6Front 5F商品本部……〒509-6472(工場・流通センター)…岐阜県瑞浪市釜戸町1121資本金………1,000万円創業…………1955年業種…………ハーブ・アロマテラピー関連製品の製造販売グループ会社…TREE OF LIFE(PVT)LTD(スリランカ)、TREE OF LIFE TRAVELS(PVT)LTD(スリランカ)事業内容……原材料の輸入、製造、開発、卸売、小売、カルチャースクール18校、旅行業、通信販売、コンサルティング(グループ会社6社)店舗数………120店舗、パートナーショップ100店年商…………80億円(65%が小売)従業員数……750人(女性:9割)■インタビュア 前田 進

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