中小企業支援研究vol4
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中小企業支援研究 別冊 Vol.411締結し、試作品製作(外注)を行います。一例として、先方担当者から「今、こういうものを作りたいが…」と打診があった場合に企画提案を行いますが、企画提案書の提出では決定に至らないケースが多々あり、100通り提案して1つ決定するかしないかが現実です。先方担当者には、若い担当者や女性担当者もいらっしゃいます。その際には、雑談のようなコミュニケーションの中から「今、こういうものが流行っているから、こういうものを作りたいですよね!」と企画の方向性を説いて理解をいただき開発を具現化していく、という手順によって弊社の業務をスタートさせていきます。 また、従来は、企画から生産までワンストップで行う会社も多くありましたが、ある会社では企画とパッケージデザインまで、別の会社では金型製作から生産までという、業務を絞った形で分業化しているのが現状です。魚路 「選択と集中」ということですね。菊地会長 創業当時には、人形の頭や手足等「パーツ」のみを製造してほしいとの要請もありました。菊地社長 しかし、現在では「完成品」を製造することで、モノづくりの技術や品質向上・管理等を全て習得できるので、できる限り完成品の受託を志向しています。今、最も重要であると認識していることは、事業承継によって私に社長が交代しても、モノづくりの技術を熟知して図面(設計)を作成できる等の有能な社員が残ってくれているということです。菊地会長 パートさんも30名程おりますが、中には30年余り勤続されている方もおり、自律的に業務をしてくれています。私たちよりも業務を熟知された方も多く在籍されています。長期勤続で貢献してくれている従業員は、弊社の「宝」であると実感しています。魚路 そこが数々の受賞商品(※)を生んだ、大きなコアな部分ですね。今、工場の生産ラインの稼働状況は。菊地社長 (箱詰めされた商品を手にされ)これはA社のプラモデルですが、お客様自身で組み立てられる際の、嵌込みにおける微妙な感覚(緩い⇔硬い)が求められるプラスチックパーツ成型が、海外生産では実現性が非常に困難なことから、自社工場で国内生産しております。1階のラインで成型工程、2階のラインで袋詰め工程を行っています。魚路 この成型工程がオリジナリティーのようですね。菊地社長 このような細かく、組み立て上支障が生じないような成型の条件・設定には独自なものがありますが、これが弊社の「ノウハウ」となりましょう。また、弊社の「缶バッジ」シリーズも何十年振りに販売好調ですよ。魚路 これは御社の企画で立ち上げたものですか。菊地社長 缶バッジは企画とパテント(特許)を玩具メーカーA社と共同で保有しており、缶で作るバッジは当社とA社でしか製造できず、他社では製造できません。したがって、現在は、国内生産よりも、各メーカーから弊社に対する実績・信頼に基づいた、前段階の開発ノウハウを活用した業務のボリュームが多くなっております。魚路 過去からの開発技術やノウハウ等、様々な蓄積があるから、先方担当者とコミュニケーションしていても概ね分かる訳ですね。社長は、メーカーとお客様の間に立つ「おもちゃのコーディネーター」的な役割ですね。菊地社長 その意味合いに近いです。ただ、海外生産でも国内生産でも、弊社の管理責任(生産工程や品質)で製品を完成させなければなりません。一例として、玩具安全基準(STマーク)というものがあります。(検査事例…完成品を1ⅿ程の高さから落下させて、当然割れますが、割れた後の形状が尖っていると不合格。また、重量物を完成品に落下させて、数㎏まで形状が維持されなければ不合格、等。)したがって、最初の設計段階から、基準を満たす仕様を組込む必要があります。「形」を作るだけなら、正直、多くの他社でも可能だと思います。菊地会長 安全や性能といった基準に則ったモノづくりが最も大変です。その仕様書やシステム作りに時間がかかりますが、弊社の技術者は全員熟知しています。柴田 その「ノウハウ」が御社の強みになるのですね。菊地会長 日々事業展開する中で、このような取組みを継続的にされている会社は少ないと思います。それを、弊社は完成品で行っているからこそ、メーカー各社から理解と評価をいただき安定した取引をさせていただいております。「何でもないようなこと」と思われることが、実は格別な宝物になっているものと感じています。魚路 それは標準化・明文化されているのですか。「缶バッジメーカー」のスケルトン

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