中小企業支援研究vol4
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中小企業支援研究 別冊 Vol.422千葉商科大学経済研究所中小企業研究・支援機構について1 大学研究所における中小企業研究・支援の重要性 全国382万(2014年)の中小企業は、日本経済の根幹をなし、地域経済と雇用を支える中核的存在となっています。この中小企業を取り巻く環境は、景気は緩やかな回復基調にあるものの、先行きについては海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する状況にあり、中国・韓国・発展途上国等の追い上げ、グローバリゼーションの進展に伴う国内生産財需要の減退、少子高齢化による人口減少の急激な進展に伴う地域格差の拡大と国内消費需要の減退などのために極めて厳しい状況となっています。さらに、生産性の伸び悩みに加えて、経営者の高齢化や人材不足の深刻化という構造的な課題が進行中であることも中小企業白書の中で報告されています。このために国、都道府県、中小企業基盤整備機構などが中小企業支援施策を実施していますが、その成果は十分に発揮されているとはいえません。この一因は大学の持っている知的資源が有効に活用されていないことにあります。 企業が情報と豊富な資金を有しており、経済・経営研究に大きな役割を果たしていることは事実ですが、企業にある情報が企業内にとどめられて一般に広く公開されておらず、また、その分析にはビジネス目的からの制約があります。新聞報道は、新しい情報の提供には有効ですが、長期的視野から、理論的研究と歴史的研究に基づいて現状を評価するということが不十分です。また、広範な読者層を対象としているために、特定の問題を鋭く追究するということが困難です。日本のシンク・タンクは、優れた委託研究を行っているものの、依頼先の意向に制約されます。真理追究を目的とする大学の研究者は、理論的・歴史的研究を行い、その成果を広く公開していますが、現場との接触が乏しく、企業の実態に深く切り込めていません。官庁は優れた人材を擁し、また、豊富な情報を有して、政策立案能力があるとされていますが、その政策評価を自ら行うことが困難です。 大学の研究所が企業、官庁、経済団体、研究者等の間のパイプ役となり、国民経済の発展に寄与する情報の伝達と研究水準の向上に努めることが重要となっています。2 本機構の発足  2012年4月、千葉商科大学経済研究所内に「中小企業研究・支援機構」が創設されました。本機構は、本学の有する知的リソースを活用しつつ中小企業に関する産・官・学連携の共同研究を推進するとともに、経営革新・経営改善・人材育成などに関する実践的な情報提供を通じて中小企業を支援することを目的として設立されたものです。本機構はこのような活動を通じて地域社会や国民経済の発展に貢献し、これによって社会的責任を果たすことを目指しています。 今日の日本経済において中小企業の経営支援が極めて重要であることには異論がありません。今日、内閣府・金融庁・中小企業庁の「中小企業支援ネットワークの構築について」(2012年12月14日)にみられるように、全国47都道府県において、各県・市信用保証協会を中心に、地域金融機関、政府系金融機関、中小企業再生支援協議会、企業再生支援機構(現 地域経済活性化支援機構)、法務・会計・税務等の専門家、経営支援機関、地方公共団体、財務局、経済産業局等が連携し、中小企業の経営改善・事業再生支援を推進するためのネットワークが構築されています。各機関の連携を通じての情報交換や経営支援施策、再生事例の共有化等による中小企業の経営改善・事業再生の促進が図られています。本機構は、このようなネットワークと連携して、中小企業の経営改善・事業再生に貢献しようとするものです。3 本機構の運営 本機構は機構長、兼担研究員(本学専任教員が兼担)、客員研究員から構成され、経済研究所副所長が機構長を兼務しています。機構の研究員は経済研究所会議の議を経て決定されます。 機構長のもとに運営委員会が設置され、経済研究所会議で決定する基本原則のもとに、本機構運営委員会で運営の実行計画を決定し、これに基づき本機構が運営されています。また、機構の研究員会議を開催し、研究員の意見を広く聴取することとしています。4 本機構の活動

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