中小企業支援研究vol4
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中小企業支援研究 別冊 Vol.44佐竹 創業時から学生服を取り扱っていましたか。田村 先代と母がはじめた創業時は、下着から背広まで扱う総合衣料店でしたが、近隣の中高の制服販売は、当時から行っておりました。制服の本格的な取扱いとしては、本店のビルが建った1980年に、学生服店と婦人服店を専門化して、本店の1階が婦人ブティック、2階で学生服とスポーツ用品の専門店として再スタートしたのがきっかけです。当時は、子どもも今の倍はいましたし、学校もどんどん増えていった良い時代だったと思います。佐竹 社長が入社した頃からは、年々子どもの数が減っていき、売上を上げるために1994年頃からは靴の通販なども行っていましたが、社長が学生服に力を入れようと決めた時期はいつ頃ですか。田村 五香店に支店を出した2003年です。靴の通販は、流行によって一時的に売上が伸びましたが、継続は難しかったです。ただ、当時、スニーカーをお買い上げ頂いた学生さんが、今は親御さんになり、お子さんを連れて学生服をご注文にいらっしゃることも、往々にしてありますので、靴の販売もやっていて良かったことは多々あります。佐竹 流行に左右される商売の難しさは、良い経験になったんですね。田村 「これが売れるだろう」と流行を予測したモデルを、発売の7~8ケ月前の展示会で大量発注したり、海外へ出向いて、売れそうなモデルを大量買いしたりと、かなり山師的な商売をしておりました。ただ、今でも通学用の革靴や、スポーツシューズなどのナショナルブランド品を、制服と一緒に販売できているのは、これらの時期、メーカーさんやサプライヤーさん達と取り組ませて頂いたおかげだと思います。沼口 ところで、先代のご経歴について教えてください。田村 先代は工業大学の卒業で理系の人でした。戦中は、陸軍の将校として、満州で戦車隊を率いて、戦後はシベリアに7年間拘留されていたようです。 帰国後は、鉄道会社で、線路の電線などを製造する企業に就職し、商人の娘だった母親と結婚しました。 その母親が「商売がしたい」と言い、先代が脱サラして、株式会社たむら洋品店を設立して、商売を行なうようになりました。当時は、高度経済成長期で、商売は良かったようです。そして、五香店へ出店する際には、取引先が支援してくれたことは、先代の力が大きいと感じています。スタッフ満足度を高める新たな展開沼口 会社のロゴは、いつ頃作成されましたか。田村 本店の改装をした3年前の2014年です。当社の経営理念を伝え、デザイナーさんに制作してもらいました。今では、商品にロゴを入れ、当社のブランドとして広めたいと考えています。佐竹 海外市場については、どのようにお考えですか。田村 日本以外には、スクールウェアを着る文化を持つ国は少ないので、逆に拡大できる可能性はあると思います。中国の学校では、体操服をユニフォームとして着る文化のある所がありますので、受け入れて頂きやすいのではないかと考えています。世界にフォーマルとしても着られるジャケットや、スカートなどを提案していけたら面白いですよね。海外展開の夢は、スタッフのモチベーションを高める取り組みでもあります。 この間、九州にある美容室「バグジー(株式会社九州壹組)」の経営者の話を聞きました。「社員を人生の勝利者にしたい」という言葉に共感し、夢を持ってもらいたいという点で、海外展開も意識しています。佐竹 スタッフが生きがい、やりがいを持って業務に取り組むことは、戦略的に考えて効率的です。 スタッフが満足すれば、現場でお客様と接しているスタッフの対応が良くなります。社長はバックヤードで経営に専念するレバレッジの効いたやり方です。ES第一主義ですね。沼口 職場で工夫されている点はありますか。田村 当社では、完全週休2日とし、女性が働きやすい環境づくりに努めています。女性スタッフは、家に帰れば主婦なので、早めに帰って、夜には旦那さんや子どもにご飯を作ってあげられるようにと考えています。佐竹 本店は、リニューアルされて、すごく綺麗でおしゃれな感じになり、見違えるような雰囲気になりましたね。田村 リニューアル前は、小屋の中で販売し、倉庫の中にフィッティングルームがあるような感じでした。 リニューアルの一番の目的は、スタッフのモチベーションを高めることでした。そして、意識の高いスタッフが販売することによって、自然に受注も増加するだろうと考えました。沼口 リニューアル後に、スタッフの行動は変わりましたか。田村 スタッフが外でお客様に説明する際に、「当店は綺麗ですよ」と説明するようになりました。スタッフが以前より誇りを持って仕事に従事しているようになったと感じています。それが何より嬉しいです。沼口 どんなコンセプトでリニューアルされましたか。田村 お客様が来店された際、気持ち良く快適に過ごせるような売り場を目指しました。スタッフが働きやすい環境も作り、お客様と私たちが共に「HAPPY」になれるスペースを作ろうと思いました。感覚的には、売り場というより、バックヤードを中心に考えました。佐竹 デザインはどなたが考えられましたか。田村 建築会社のデザイナーさんです。木の木目などにはこだわりました。先代から引き継いだ事業沼口 社長の経歴についてお伺いします。田村 大学卒業後、アクセサリーメーカーで1年弱勤務した後、1988年末に先代の指示で当社に入社しました。入社時は制服店とは別に婦人ブティックもあり、先代を含め常勤で6名体制でした。

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