中小企業支援研究vol4
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中小企業支援研究 別冊 Vol.45 私は2005年に共同代表となり、先代が体調を崩した2008年に、突然「会社の経営をしろ」と言われ、やり方を教わらずに社長業の全てを任されることになりました。先代が亡くなった2010年に単独代表となりました。引き継いだばかりの時は、出納帳などに苦労しました。佐竹 帳簿管理と、資金繰りのどちらが大変でしたか。田村 資金繰りです。単独代表になった頃には安定してきていましたが、入社時からつい7~8年位前までは、厳しかったです。入社時などは、以前の顧問会計士から、廃業して勤めた方が良いと言われていました。しかし先代の気持ちや、まわりの様子から「ちょっと無理をすれば、やってやれないことはない」と思い、続ける決意をしました。沼口 資金繰りが改善したきっかけは何ですか。田村 五香店に支店を出して、事業の中心を学生服にシフトしたことです。また、販売先となる量販店との新規口座を、新しく大手地銀に口座を作り、取引を始めました。入学時は大きな売上が口座に入るので、銀行から条件の良い融資を受けることができるようになりました。借り換えによって、資金繰りがさらに改善しました。五香店に出店してからは、大手地銀の行員ともコミュニケーションを密に、信頼関係を構築していきました。佐竹 属人的な経営から、前進されたんですね。田村 まだ、家業的な要素が残っていますが、自分とスタッフの意識が変わり、組織的な事業になりつつあるのではないかと思います。 今、振り返ると、入社時から資金面で、新しいことができず、厳しかったですが、取引先との交渉はすべて私が行い、厳しい経営状況の中、成功のレールではなく茨の道でやってきた事が良い経験になっています。佐竹 資金的に苦しかったのは、いつ頃からですか。田村 入社前からでした。以前の顧問会計士には、承継しない権利もあると言われましたが、前向きに承継しました。佐竹 マイナスからのスタートですね。田村 協力してくれたお取引先や、スタッフ皆のおかげで、今までやってこられたと思います。似たような状況下ですと、事業承継をしない知人も多かったです。佐竹 なぜ、火中の栗を拾うような選択をされましたか。田村 やはり先代に言われ、入社時から保証人となっていたこともあり、若かったですし、楽観的で、自分が会社を続かせなければと思いました。不安感はありませんでしたが、危機感がありました。壁はたくさんありましたが、その都度乗り越えてきました。沼口 壁を乗り越え、事業が安定した時の達成感はありましたか。田村 6年前の決算時、現顧問税理士事務所の、今は亡くなった創業社長に、「会社がやっとこの段階にきたな、大変だったな、あんたは偉いよ」と言われた時は、すごく嬉しかったです。泣きました。佐竹 「Happy & Cry」ですね。良い話ですね。社長の頑張りが評価されましたね。田村 「自分は頑張ったんだなぁ」と初めて実感したと同時に、先代は苦労ばかりで亡くなってしまいましたので、申し訳なさもありました。2代目社長の視点から見た事業承継のポイント沼口 2代目社長として、円滑な事業承継ができたポイントはどこにありますか。田村 先代は、私に任せたことは何も言わなかったですね。任せたら、口を出さない先代と私の関係が良かったからだと思います。 友人の会社では、先代が2代目社長に対して口を出し、もめ事になるケースもあったようです。沼口 社長は先代を尊敬し、先代も社長に任せたからには信頼する関係が、円滑な事業承継につながったんですね。田村 先代からは、要所要所で経営についての指導を受けていましたが、基本的には信頼されて事業を任されていたように感じます。何事にも文句は言われませんでした。先代は、新しい事業を行う時に、「博士になるくらい取り組め、とことん追求しろ」とよく言ってくれました。佐竹 今では学生服の博士ですね。沼口 最後に、今後の目標について教えてください。田村 業界をもっと盛り上げたいですね。経営理念である「HAPPY & SMILE」を広げるため、快適でカッコイイ、可愛い制服や、元気になる体操服、シューズをハレの日としてお客様に提供できる店を多く創っていき、スタッフの生きがいになるような会社にしていきたいです。そして、後継者不足等に悩む学生服販売店の店舗運営支援も出来るようになりたいです。沼口 本日はありがとうございました。■企業概要企業名………株式会社たむら 本社所在地…千葉県松戸市金ケ作408-182店舗数………6店舗資本金………1,000万円創業…………1957年10月事業内容……学生服・スポーツウェア・バック・徽章など学校関連用品の販売・企画製造年商…………3億6,000万円(平成29年度9月予想)従業員………33名(新入学販売時)■インタビュア:佐竹恒彦…千葉商科大学大学院客員教授■インタビュア及び原稿執筆:沼口一幸…千葉商科大学大学院修了生本店の前で、笑顔の田村社長

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