中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.58いうのは、心とお金に余裕がないと難しいかもしれません。目の前に売り上げをいくら上げないといけないという問題があると、なかなかそのような発想ができないかもしれないですね。社長にはその余裕があるからでしょう。村山 加えて提案力の違いですね。顧客のスーパーや小売店も競争が厳しい業界なので、顧客の売上を伸ばせるような提案力があれば、逆に仕事が入ってきます。印刷業者の側に提案力があるのかどうかという問題ですね。社長 提案を受け入れてもらえるかどうかは、もちろん提案内容の良さもありますが、人脈が大きく影響します。まず、どこの部署がそれを決定するイニシアティブを持っているかを知ることです。当社の得意先のグローバルの情報会社でしたら購買です。次に、その購買を攻めるにはどうしたらよいか。誰にどのようにお願いしたらよいか、戦略・戦術を考えることです。当社は大企業と30社くらいお付き合いしていますが、全社そのようなやり方で攻めていきました。栗原 やはり、オリジナリティのあるアイデアだけではなく、ビジネスにするためには、戦略・戦術が大切なのですね。社長 自分より年上の決定権限のある人に対して、うまく甘えてお願いできるかどうかです。「いいよ。やってあげるよ。」という答えが引き出せれば、うまくできます。逆に、その人に「ダメだよ。」と言われてしまっては、どんなに努力してもできません。肯定の答えを引き出すためには、自分が他人から好かれる人になる栗原 その「いいよ」という答えを引き出すために、上手にお願いするには、どのようにしたら良いのでしょうか。社長 人懐っこさですね。持って生まれた性格もあります。人にうまく甘えられるかどうかは、人に好かれるかどうかです。人に好かれるためには、他人が嫌がることを自ら進んでできる人になることです。そういう人だから、君なら「いいよ」となるのです。栗原 人と人との関係、ギブアンドテイクの関係が大切ということでしょうか。社長 私の母校の小学校では、人と人とのふれあいが大切だということを教えるために、友人や知り合いの人にだけではなく、街で出会ったいろんな人へも「挨拶をしましょう」という活動をやっています。栗原 話は変わりますが、社長は地域のお子さんなどの教育活動にもかかわっていたのですか。社長 PTA会長を10年間勤めておりました。教育関係のボランティアで、仕事の方が疎かになってしまったこともあります。小学校と中学校のPTAの会長をやりましたし、いまでも同窓会の色々な世話役の奉仕をしております。栗原 そのように人とのつながりを大切にすることが経営においてもカギとなってくるのですね。村山 社長は下町育ちですよね。お嬢様、ご子息様も社長と同じ小学校に通っていらっしゃいましたか。社長 そうです。聖路加病院の近くの明石小学校というところに通っていましたが、今年で創立110年です。上の娘が入学してから、下の息子が卒業するまで10年間PTA会長をしておりました。そこでサッカー部やバドミントン部の創部にもかかわりました。中央区は阪本小学校、泰明小学校と100年を超える歴史がある小学校が多いのです。村山 社長とお子様の育った地域には、人と人との深いつながりがありますね。地方に行くとそのような深いつながりがまだ残っているところがあります。経営者の方には、そのような深いつながりをチャンスとして上手に経営に活用して欲しいです。仮に今の経営者が上手くできなくても、後継者の方にはつないでいって欲しいですね。社長にも後継者はいらっしゃいますが、後継者教育はどのようにお考えでしょうか?社長 後継者教育については、私の中でもどのようにしたらよいかと葛藤があります。また、本人の考えがあるのだから言ってもしょうがないときもあります。そのようなこともありますから、最初からある程度任せるようにしています。村山 逆に任せていて、仮に社長の目から見て足りないところがあった場合、どのようにサポートされますか。社長 サポートというより時間をかけて教えます。最初はただずっと見ています。それで、タイミングを見て「こうやった方がいいよ」とか、「こうやっておけば持続的になるよ」とかアドバイスします。そして、何かあったとき、たとえば、接待の仕方とか詫び状の書き方とかを教えます。特に、マイナスのことが起きてしまったときの対応の仕方を教えます。印刷機印刷工程を説明する羽生社長

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