中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.510てきます。企業は自社にとどまらず、外注先やベンダーが引き起こした情報流出事故についても責任を問われますので、これからは情報管理レベルの高い先でなければ、自社情報の提供を伴う仕事は発注しないようになってくると思います。村山 社長はプライバシーマークを取得されていますね。個人情報などの情報管理はどのようにされていますか。社長 グローバルの情報会社とお付き合いしているので、規制の厳しいヨーロッパを含んだ世界中の個人情報が入ってきます。情報管理はしっかりするように心掛けています。逆に、情報管理がきちんとできなければ、仕事はできないと考えています。栗原 名刺に印刷する情報は個人情報そのものですね。社長 まったくその通りです。当社は、ものすごい情報をお預かりしていることになります。大企業にお勤めのたくさんの方の個人情報がここにあるのです。また、同時にその会社の経営情報もお預かりしていることにもなります。ある会社では、名刺の使用量がその営業マンの営業成績との関係が深いとして、人事評価の指標になっているほどです。加えて、名刺が偽造されるとそれを使った詐欺事件につながることもあり、同時に高い印刷品質の管理も要求されます。栗原 印刷業は、単に印刷に関することだけではなく、いろいろなことに気をつけなければいけない業界なのですね。印刷業の本来の仕事は、様々な情報の媒体を通してお客様の繁栄をお手伝いすること社長 今までの印刷業はオフセット印刷の機械を回していれば商売になりましたが、これからは機械にできることは機械にやらせて、人間でなければできないことを人がやるというようにしていかないといけないでしょう。栗原 それは、印刷業は刷ることだけが仕事ではないということを意味しているのでしょうか。社長 そうです。逆に言うと、印刷業はお客様を繁栄させる知恵を出すことが仕事です。そのために、情報の媒体を提供するということです。栗原 情報のプラットフォームを提供して、お客様が繁栄するのをお手伝いするのがこれからの印刷業の姿ということでしょうか。社長 そう思います。たとえば、当社の名刺注文システムを導入したことにより、ある顧客の社内経費は年間約20~30百万円も削減できたそうです。社員の個人別の名刺の発注量が瞬時に把握できるようになり、経費管理、加えて人事評価においても効率化が進んだとのことです。村山 名刺注文システムのお話が出ましたが、改めてここで会社のビジネスモデルをご説明いただけますか。社長 実際に現場をご覧になってご説明したほうがよろしいでしょうか。簡単にポイントお話しますと、ある意味ずるい話かもしれませんが、今まで印刷業がやってきた仕事の一部についてシステムを通じてお客様に担ってもらったということです。村山 それは、競争に勝つための作戦ですから、ずるい話ではありません。それに加えて、貴社はお客様を独占的に維持、定着化する興味深い仕組みを持たれています。それでは、実際にシステムを拝見しながら、社長とご子息の専務からもお話をお聞きかせください。栗原 貴社の主力事業であるA社さんからの名刺受注の業務の流れを教えていただけますでしょうか。専務 まず、A社さんの受注ホームページにログインして、入力情報があるかどうかを確認します。現在、20名の方の発注情報が確認できます。基本的にA社さんがご自身で発注情報について入力します。この情報をダウンロードするとCSVファイルで入力された社名、部署、名前などの名刺作成に必要な情報を確認することができます。このCSVデータを自社開発のシステムを使って名刺のデザインを作る組版データに変換します。これが名刺を印刷するときの枠ですが、1面に3×8の24名分の組版データを割り付けします。先ほど見ていただいた名刺印刷に必要なテキストデータをオートCADに読み込んで自動で組版データを作成することができます。色々な会社から発注を受けますが、どの会社も基本的なフローは同じで、お客様の方で印刷データを入力していただいて、それを当社のシステムを経由して組版に流し込んでいきます。村山 発注するお客様の会社はバラバラでも、羽生さんのシステムでバラバラの注文が集約され、異なる会社に所属するお客様の印刷データも組版としては同じ1枚の中に集約されるということでよろしいでしょうか。専務 その通りです。社長 名刺印刷に必要な入力データは標準化されています。それぞれの会社で発注データが入力、そして承認されると、当社からは受注確認メールをそれぞれの発注元に自動送信します。当社側のシステムでは、印刷に必要な情報データと価格などのビジネスデータを分離して、印刷に必要なデータだけを印刷システムへ流し込んでいきます。栗原 会社さんごとに仕様が異なると思いますが、どのように対応するのでしょうか。専務 会社ごとにテンプレートがあります。オートCADで異なるテンプレートを一面24枚分の枠の中に混在させて自動に組むことができます。村山 通常の名刺印刷業者の場合は、注文時のやり取りは一人のお客様に対して一対一の作業になりますよね。羽生さんのところは同時に何件でも受付できるということですね。社長 はい、その通りです。加えて、一つの会社でたくさん営業所があっても、全国の営業所からバラバラに発注された情報を一元管理することもできます。栗原 印刷機で印刷するときは違う会社のものが混在した24名分の名刺を一枚の印刷物として大きな紙に印刷し、後で名刺サイズの24個に裁断して、それぞれ注文を受けた方の名刺にするのですね。

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