中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.514和菓子に魂を吹き込む職人、率先垂範の人材育成について井上 製造スタッフは10名いて、九州から北海道まで全国の和菓子屋の子息を預かり、彼らは3年から5年くらいしたら実家に帰ります。入社した職人達には一つの目標を持たせています。国家資格の菓子製造技能士の資格取得です。1級と2級があり年1回の試験で、うちの合格率は99%です。勤務中は仕事の中でポイントを見つけて指導します。そして終業後に、修業の時間として別途指導しています。小原 色々なお菓子作りの工程が経験できそうですね。井上 店頭には和菓子が常時40種類位並び、それが1ヶ月毎に変わります。上生菓子は15日周期で変わるため、年間にすると数百種類の和菓子を覚えることができます。さらに、今は店舗で接客までできるように指導しています。前田 社長ご自身も腕を磨いていて、社員に良い刺激を与えているとか。井上 弟子たちから国家試験を受けたいという声があり、それならまずは自分が取らなければと、お菓子検定(国家試験)1級を取りました。次に狭き門でしたが、憧れの「選・和菓子、優秀和菓子職」にも挑戦して認定されました。前田 口で言うほど簡単なことではないですよね。今は社内の目標の一つになっているでしょうし、外に向けたブランド力の強化発信にもつながっているのではないでしょうか。井上 特に、内部の若い弟子たちから目指したいという人が出てきたり、またブランド価値を高めることによって発言力を増し、製菓学校から講演を依頼されたりもします。小原 実践的なOJTを実施されていますが、OFF-JTも取り入れていますか。井上 OJT中心にやっていて、常にそばで目を配っています。そうなると一人で見るには限界があるので、少し腕の立つものはその下を見るようにして、ある程度組織化しています。前田 お母様の販売力をどうやって伝えるかも大切ですね。井上 販売方の組織化に向けた人材育成が今の母の課題です。製造部門は組織化が進んで私が抜けていても作ることができるのですが、販売は個々のお客様への対応という難しさがあります。前田 そうすると今後の目標は接客と販売力強化ですね。井上 もう一つ、陳列についても強化が必要と考えています。たくさんの商品が並んでいると初めてのお客様は何を選んだらいいかわからなくなってしまう。お遣いものに適したお菓子を選り分けるなど工夫が必要です。前田 製造スタッフの独立制度のようなものはありますか。井上 梅花亭の名で暖簾分けすることはできませんが、独立することに対しては、開店に際し少し補助を出したりします。甘い和菓子なのに「苦いどら焼き」、この苦さが暖簾を守る小原 商品についてですが、人気のラインナップはどんなものがありますか。井上 「浮き雲」ですね。かつては数ヶ月先まで買えないとう状況でしたが、今でも年間1番の人気商品です。2番は、祖父が考えたお菓子で「鮎の天ぷら最中」ですね。これはネーミングの妙と特殊な技法があります。3番目は「3代目正男のレモン大福」です。父が引退するにあたり自分のものを残したいということで、商標も取りました。前田 知財戦略を考えてのことですか。井上 もともと明治期より梅花亭に「三笠山」という「どら焼き」の名前がありましたが、他店が昭和23年梅花亭本店

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