中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.515に商標登録をしてしまいました。苦い経験です。商標はしっかり守っていかなければいけません。前田 どのような商品に対し登録を行っていますか。井上 定番的な商品で「神楽坂石畳」、「神楽坂古梅」など、神楽坂にちなんだ商品は登録しています。突然の海外講演依頼、肌で感じたお菓子文化前田 海外で和菓子作りを実演されたこともあるそうですね。井上 昨年、外務省の日本ブランド発信事業でご指名いただき、イギリス、スコットランドに渡航することになりました。急にお話をいただいて、何もわからず、巨大なスーツケースに餡子を満載して行き、現地では、お客様の目の前で上生菓子の実演や講演をしてきました。海外にもニーズはすごくあると実感しました。彼らは「全植物性で」、「こんなに美しくて」、「甘くておいしい」ものができるなら、私たちも作りたいという人が多く、豆がこんなものになることに、すごく驚いていました。時代の変化を捉えチャンスをつかむ、確かな経営哲学前田 訪日外国人が増えていますが、外国人向けの対応は考えていますか。井上 多くの方が抹茶を求めてきます。池袋時代の「浮き雲」の抹茶味をリバイバルしました。でも外国人の売り上げは1割も満たず、メインはやはりここに住んでいる方です。また、この6月に神楽坂にオープンするデンマーク発の実力派レストラン「INUA」で、当社の餅を使ったデザートを一日150食限定で提供することになりました。前田 安定した仕事になりますからいいことですね。このように新たな道が開けていく中でどのように将来をお考えになっておられますか。井上 この先、両親が引退し、私一人となれば支店を閉め、規模を小さくし、この店舗だけという選択肢もあります。あるいは組織化して従業員を役員的なものに上げ、やっていく方法もありますが、まだ明確なビジョンではありません。増店しても今以上は生産できません。海外も和菓子の開拓余地は大きいですが、手作りに拘ると今が限界です。ここは梅花亭の「肝」であり「魂」です。前田 社長の経験を語ることが、これからの役割の一つかもしれませんね。ところで、最近のコンビニスイーツの躍進をどう見られておりますか。井上 自分たちが売るものに対して、差別化してきた商品です。価値観の異なるターゲットを対象にしているので気にしていません。前田 純国産の材料にこだわっていますか。井上 基本的にそうですが、「柏の葉」などは採取する人がいなくなり、国内産がなく中国製に頼らざるを得ません。一次産業は地方の高齢化でどんどん外国産に転換しています。そのうち全てのものがそうなるのではないでしょうか。前田 お話を伺い感銘を受けたのは、時代時代への対応力と消費の中心はお客様であることを常に忘れずにいること。お客様とどう向き合えば支持を得られ、継続的繁栄を手にできるのか。その秘密は目に見える表層の部分ではなく、初代から無形という形で受け継がれている和菓子への想い、つまり「和菓子作りはどうあるべきか」という「梅花亭哲学」が貫かれていることでした。本日はありがとうございました。■企業概要企業名………合資会社梅花亭所在地………東京都新宿区神楽坂6-15資本金………90万円創業…………1935年(昭和10年)業種…………和菓子製造販売年商…………1.3億円従業員数……18名(内役員3名)本店…………5坪支店…………1店舗 20坪■インタビュア:前田進…千葉商科大学大学院商学研究科客員教授㈱マネジメントコア前田代表取締役■アシスタント:小原久明…千葉商科大学経済研究所客員研究員中小企業診断士オリジナル和菓子イギリス/ロンドンで日本の和菓子作りを披露

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