中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.518 全員参加型の企業運営に至るまで大塚 従業員さんと一丸になって取り組んだとお聞きして思い出しましたが、以前御社へ企業実習に伺った際にも驚かされましたが、皆川社長は電話番や現場に入ることもあるのですね。皆川 はい、その通りです。当社は少数精鋭で工場を回しているので、繁忙期やお客さまへの納期が厳しくなった時、あるいは現場スタッフが病欠の際などは、社長の私も工場長の指示に基づいて主に補助方として現場に入ります。大塚 「社長ですから、ドンと構えて仕事をされれば良い」というのが一般論のようですが。皆川 確かにそういう考え方が普通でしょうね。私も社長としてマネジメントだけを考えていれば良いのでしょうが、納期が間に合わない場合には、率先して現場に入ります。現場の人材確保が難しくなっているのも事実ですが、社長が売り上げと利益を生み出す現場のことを熟知していることが大事なことと考えています。ノーマライゼーションを実現する職場として大塚 さて御社工場の工程には、ハンディキャップを持たれた方が従事しているようですが。皆川 はい、知的障がいのある方を従業員で雇用しています。枝村 それは素晴らしいことです。大企業では障がい者雇用のパーセンテージが示され、実際雇用しながら、実態は人数合わせの側面がある会社もあると聞いています。皆川 当社も民間企業であり中小企業ですから、障がいのある方たちを人数調整のために雇うほど余裕はありません。あくまで戦力とみなして雇っています。ですから、物理的に出来ないことや不得意なことはさせずに、出来ることや得意なことに関しては精一杯働いてもらえるよう、他の健常者である従業員と全く一緒の感覚で仕事をしてもらっています。枝村 それはビックリしました。障がい者雇用で困ったことはないですか。皆川 実はそんなに困ったことはありません。むしろ健常者である従業員の方が困らせることが多いです(笑)。実際には、知的障がいを持った従業員が、工程マニュアルの中で漢字が弱い場合に、周りの従業員が教えてあげるとかして、むしろチームワークや現場一体感の醸成に繋がっています。大塚 先ほど工場内を見学させて頂きましたが、ハンディがある10代の方をお見掛けしましたが。皆川 はい、今日は近隣の特別支援学校(旧、養護学校)、一般でいえば高校生の年次の学生が職場体験に来ています。毎週水曜日が研修の日になっています。枝村 ハンディのある従業員の方が研修生をみていて、熱が入った指導をされていました。皆川 そうでしたか。当社は研修生であっても工場稼働時間は戦力とみなして対応しているからでしょう。適当に優しくあしらっているほど余裕はありません。お客様扱いでは彼らの研修に役立ちません。枝村 特別支援学校から何か言われませんか。皆川 見ての通り少し厳しい職場研修ではないかと社長である私も思っていましたが、実は参加した研修生から毎年大好評とのことでビックリしています。参加した彼らは一様に、「特別扱いせず、他の従業員と全く同じように接してくれた」ことに感動しているようです。当たり前のことですが。枝村 そうでしたか。これからも特別支援学校の職場研修を受け入れていく予定ですね。皆川 もちろん。ただ、特別支援学校の先生が話されていたのは、受け入れ企業がなかなか増えていかないことを危惧されていました。枝村 そうでしたか。上場企業も含め、他の会社では特別支援学校の生徒さんの職場研修は未だボランティア活動程度としか考えていないから、受け入れていないのかもしれません。皆川 私としてはノーマライゼーションに関する会議や深絞り技術で製作した水も匂いも漏れない容器工場内作業風景

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