中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.521減らしたが、発注が均等に減ったわけではない。集中発注と内製化を通じ、中小企業のなかでも特に小零細企業への発注が減少した。 図表1によると「外注先の絞り込み」すなわち集中発注があったとする企業は、94年の30%台から2000年以降は40%台に増加し、「海外からの部品調達の拡大」より指摘割合は高い。この項目については好影響を受けた企業が悪影響を受けた企業割合を上回っているが、回答企業には上場企業と取引するような有力企業が多いためで、こういう企業の存在の反面として集中発注の悪影響を受けた企業も多い。集中発注は発注先に規模の経済性を発揮させ、部品単価を引き下げようとするものだから、企業規模の大きい中小企業が優先され、小零細企業への発注は減るか、打ち切られる。 「内製化の推進」は「外注先の絞り込み」より割合は低いが、この場合も、本図表の対象となっている中小企業は有力企業が多いためと推測され、機械工業全体では本図表に見るより内製化が活発化した。内製化の要因には不況に伴う余剰労働力の活用と技術革新があるが、90年代以降、国内機械工業の生産が長期間落ち込み、雇用過剰が慢性化したことが内製化を引き起こした。取引先の内製化は当然受注に悪影響を及ぼし、図表1では「悪影響」が「好影響」を大きく上回っている。この図表ではどのような中小企業が内製化に直面したかは明らかではないが、親企業にない専門的技術や親企業以上の生産性があれば内製化に直面しないはずだから、内製化の悪影響を受けた中小企業には、これらの点で劣る小零細企業が多いと思われる。 以上のように、生産の東アジア化が中小企業全体の市場を縮小し、集中発注・内製化という下請政策が小零細企業の市場をより縮小したのである。 中小企業の経営困難化の第2の要因は、下請単価の激しい切り下げである。1990年代以降、大企業は生産の東アジア化をバックに、国内下請企業に中国などでの部品調達価格を示し、大幅な単価引き下げを要求するようになった。国内中小企業を東アジア企業との直接的競争に引き込み、「アジア価格」を梃子に下請単価を管理する新たな方策である。これによる下請単価の激落ぶりは図表2が示している。下請単価は92年以降常に前年同月を下回っており、その下落率も93年以降は5%前後を推移し、01年の一時期には10%も下落した。コストの改善がなければほとんどの企業を赤字に追い込む大きな下落率である。本図表には受注量も示されているが、91年初めと04年を除き常に前年同月を下回っている。受注量が下がり続けているため下請単価が下落し続けているということだが、受注量が低下し続けるのは、より安く製品を供給する東アジア企業へ発注が向かうからである。 以上と共に下請制の変質ともいうべき現象が広がっていることも指摘したい。 従来から下請単価引き下げは下請企業のコスト・ダウンを待つまでもなく、親企業により先行的に決定されていた。ただその場合でも、下請企業における加工方法の改善可能性など、単価引き下げ実現のための生出所)中小企業庁「下請中小企業短期動向調査」より作成、本調査は2005年9月が最終。7580859095100105919293949596979899000102030405前年同月=100年受注単価受注量図表2 下請受注単価、受注量 前年同月比

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