中小企業支援研究vol5
6/32

中小企業支援研究 別冊 Vol.54トは地域性も高く、公共性も高いので地域に貢献する事業です。父を早く亡くしたこともあり、医療機関にも参入していますし、現在では学校の運営まで手掛け、多方面から地域に貢献していこうと思っています。生コンの産業としての存在価値を社会にもっと認識させたい鮎川 今後の御社の方針についても伺わせてください。柳内 我が社の関わるコンクリートは、日本の建設業の重要な役割を果たしていると思います。しかし、生コンの仕事は建設業の下請けになっている状況です。日本は海と山に囲まれた狭い国土ですので、限られた場所に建物を建てる仕事は非常に重要です。ですから、そこにかかわる建設の資材である生コンの仕事は、世の中になくてはならない産業であると思っています。私たちは、この生コンの仕事を世間にもっと認めていただくこと、社会的存在価値をもっと高めていくことを大切にしていきたいと思っています。会社の強みの秘訣鮎川 そのような中で、人材や組織の活性化は重要な課題ですが、どのように取り組んでおられますか。柳内 本業に徹する人が大事だと思っています。私どもは現場での経験を重視しています。私も、父亡き後10年間の母の苦労を見て育ちました。現場の仕事の重要性を身に染みて理解しました。それが当社の経営の原点になっています。ですから、営業の一線、現場で一緒に行動し、背中を見て経験を積むことを社風として落とし込んでいきたいと思っています。鮎川 そのためにはどのような工夫をされているか教えてください。柳内 全社で夢を共有することはもちろん、行動も共有することを大切にしています。それと利益が出たらすぐに分配することが重要と思います。鮎川 なるほど、どのような取り組みをされていますか。柳内 支店ごとに目標を立て、計画的に収支計算をして賞与、報奨金などの形で分配するようにしています。風通しの良い会社を目指していますので、成果が出れば、経費に制限はないと思っています。鮎川 ご苦労もありましたか。柳内 自由にできることと任せっきりということは違うと思います。組織は、軽く見ていると大変な思いをします。その経験もあります。経理などは一人で回せないように配慮が必要です。人材育成も重要で、年商500億の人材と1,000億円の人材は異なると思っていますので、教育も重要と思います。当社は、営業社員もつれて取引会社を訪問します。連れて歩けば、頼りにされ、好かれる人柄はすぐにわかります。他社とのお取引の場合も同様です。社員に活気もなく挨拶も十分にできないような、暗い会社とはお付き合いできません。鮎川 自社内でも取引関係でも絆を大切になされていますね。具体的な例を教えてください。柳内 事業家にとって金融機関は重要なパートナーですからお世話になっている銀行の支店長への年2回の挨拶、銀行への説明会などは必ず行っております。社内では社員とバスで50人ほどの団体で身延山の日蓮宗本山へ物故者の慰霊祭に参ります。私たちの仕事は危険も伴いますので、信仰心をもっていることも重要と考えております。会社は大きくするより小さくする方が難しい鮎川 人間は常にアンラッキーなことにも見舞われ、思うようにいかないことも多いので心を定めていくことが重要かもしれません。柳内 ビジネスも計算通りにはいかない。なるようになると無欲でいることも大切です。でも必ずできると思ってやっています。大きく勘を働かせて行動している面は少なくありません。鮎川 成長していくのに大切にしていることは何でしょうか。柳内 従業員ととことんディスカッションしています。発生する問題には必ず原因がある。「あなたはどう思っているの」など追及していきます。十人十色ですから、意見を言いやすい環境づくりも大切です。将来は社員のご両親を入れた入社式をやれるようにしたいと思っています。家族の痛み喜びを知っておくことは重要です。鮎川 原点のファミリー経営を重視したいということですね。柳内 人間関係が大切なのです。鮎川 女性の経営者、女性社員についてはどのようにお考えですか。柳内 女子は頭脳の面でも社会性でも進んでいる人が多いと思います。男性をしっかりさせる女性になるべきと思います。すべては、「金は天下の回り物」、つまり道具ですから、儲けようとするのでなく、儲かるようなやり方が大事です。努力した結果、利益が出るというような仕組み、構造づくりや改善が重要なのではないでしょうか。儲けるということは達成感と同じです。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です