中小企業支援研究vol5
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中小企業支援研究 別冊 Vol.56高度な印刷技術と独自のビジネスモデルで持続可能な優位性を構築する羽生グループ栗原 まず初めに会社の成り立ちと沿革についてお教えいただけますか。社長 私の父である先代社長が芥川龍之介と友人であった縁もあり、昭和の終戦後の頃から、東京・京橋で書籍出版を中心に印刷業を営んできました。当時は活版印刷の時代で父は東京の活字植字工の初代チャンピオンでした。その後、活版から電算写植に移行した際には、他社と共同で紙の鑽孔テープによるシステムを構築しました。出版印刷から名刺印刷へ業務を拡大したきっかけは、ある銀行からの名刺印刷の特別注文を受注したことでした。予想外の利益増加につながり、ビジネスとして大変興味深いものと実感し、以後大手企業を中心に名刺印刷を受注するようになりました。栗原 印刷業界は競争が厳しく、その中でも名刺印刷は競争が厳しい事業とお聞きしますが、どのようにして高成長の主力事業として絞り込むことができたのでしょうか。社長 後ほど、名刺印刷の詳しい業務フローについては、現場をご覧いただきながら説明しますが、従来の名刺印刷のワークフローについて、ネットを利用した自社開発システムにより効率化を図り、コストダウンを実現しました。ユーザー企業の名刺印刷代削減にも貢献し、喜んでいただいたことが成功の要因と考えております。中小企業経営者に大切なものは発想とその組み合わせ栗原 その成功要因についてですが、中小企業が事業を成功させるポイントはどのようなものでしょうか。社長 中小企業の経営者に大切なものは発想と組み合わせです。発想によって新しいものをどう生み出すかです。商品・サービスや作業プロセスをコンピュータ化する、アナログなものをデジタル化するなど、どのように発想していくか、それらをどのように組み合わせていくかです。栗原 その発想と組み合わせについて、他の経営者の方にも参考になるように、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。どのようにしたらオリジナリティのある発想と組み合わせが出てくるのでしょうか。社長 高校・大学で数学が好きだったからお話するわけではありませんが、方程式には従来からある方程式と新たに実験して作っていくものがあります。昔からある方程式だけを組み合わせたのでは限界がありますので、新たに実験して創造して行こう、そして、実験して作ったものを組み合わせていけば、次々と新しいものが出来上がるのではないかと考えました。光化学反応という、今のLED技術などの照明工学の前身になるものを勉強していたこともあり、社会人になって商社に入ってからゼロックス社を担当しました。そこで、コピー機の光を当てるランプとそれを安定させる安定機、電気ストーブのように熱を出して乾かす熱管球装置などに携わっていました。それらの処理を高速で瞬時に行うにはどうしたらよいか、高電圧をかけたり、大容量の電流を流したり、東芝の照明事業部の方と危険を伴う実験を繰り返して今日に至りました。その研究過程でスピードに比例的な関社長プロフィール羽生 直(はぶ すなお)。1946年生まれ。東京電機大学高等学校卒業。東京電機大学通信工業部卒業。商社入社、複写機の光化学反応の業務に携わる。その後、家業の有限会社羽生印刷入社、又、株式会社羽生を創立し、コンピューター会社の購買事業部とEC(電子取引)+eビジネスを構築する。現在は、ECを利用した取引、Web創造、利益の出る出版を展開中。・東京都中央区より教育功労賞 受賞・東京都中央区工業団体連合会 相談役・警視庁築地警察署青少年健全育成理事専務プロフィール羽生 智一(はぶ ともかず)。1980年生まれ。都立白鴎高校を卒業、立教大学経済学部卒業。その後、渡米し留学、コダック社でデジタル印刷機に関する研修を受講。現在、株式会社羽生 専務取締役。印刷・Web・出版に関する事業の技術・営業部門を主に担当。経営者インタビュー【株式会社羽生】左から 羽生社長、羽生専務、村山

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