中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.68売上の季節変動・品揃え中川 売上の季節変動はありますか。季節変動があれば、品揃えなどで売上維持の対策などされていますか。山田 日々の生産量は前年度の実績をベースに天候などを考慮して毎日現場で決定しています。人形焼は暑い時期には売上が落ちます。しかし、夏でもお盆の時期は帰省などの手土産として人気があるので、お盆の時期は売上が高くなります。かつては、夏の売上維持を目的に水羊羹などを販売していた時期もありましたが、現在は止めています。いまは特に対策をしていません。「本所七不思議」の活用(物語性をプラス)前田 本店で作家の宮部みゆき先生の色紙を拝見しました。山田 宮部先生は以前から山田家のファンになっていただいています。先生は本所のご出身で高校時代には通学路として山田家の前を毎日通学されていたようです。先生が吉川英治文学新人賞を受賞された「本所深川ふしぎ草紙」は、山田家の包装紙に描かれている「本所七不思議」をヒントに創作された作品です。包装紙には漫画家で江戸文化研究家の宮尾しげを氏による江戸の伝承話「本所七不思議」が描かれています。やはり、商品に「本所七不思議」の物語性があることが人気の秘密ではないかと考えています。人形焼の種類も「本所七不思議」にちなんで、「たぬき」、「太鼓」、「芦」、「提灯」、「囃子」、「椎の葉」、「行灯」を品揃えしていました。しかし、「たぬき」が圧倒的に人気で売上の7割を占め、他の種類の売上が少なかったので、現在では「たぬき」、「太鼓」、「三笠」、「紅葉(餡なし)」の品揃えになっています。私としては「人形焼き本所七不思議セット」のような商品を売りたいのですが、生産が大変ですから、従業員の意見も大事にして商品を売れ筋に絞っています。経営形態の強み前田 大きく儲けるのではなく堅実な経営が御社の強みです。その秘訣をどのように考えていらっしゃいますか。山田 山田家は人形焼を原料から製造して、これを最終的にお客様に直接販売しています。このため、製造業としての利益と小売業としての利益の両方を得ることができますので、売上の拡大を図らなくても、比較的利益を確保しやすい経営形態になっています。さらに食品卸としての側面もあり、これが仕入を比較的低原価で有利にできるのです。また、販売先の面でも人形焼に商品力があるので、百貨店などに出荷する場合、全品買取の取引条件でお願いできることも利益確保に貢献していると考えています。しかし、生産力に限界があるので、期間限定の出荷しかできていません。中川 店舗が錦糸町駅前に本店、錦糸町駅ビルに支店、東京スカイツリーと東京江戸博物館に売店、と4か所ありますが、出店戦略などあれば教えてください。山田 本店は創業時から同じ場所で事業を行っております。自社ビルを、本店・工場・事務所・倉庫として使用しています。支店や売店の出店は、全て先方様から依頼を受けて出店しています。このため、出店の条件はやや有利になります。本店や工場に賃借料が掛からないことや、支店や売店を有利な条件で出店できていることが、堅実経営の要件になっていると考えています。口コミで拡大する認知力中川 御社の人形焼については知名度も高いですね。山田 おかげ様で口コミで多くのお客様のご愛顧をいただいています。テレビの取材も受けますが、最近では、インターネットの「Tastemade Japan」に取り上げられ、製造工程の動画がインターネット上にアップされています。無料で製作していただきました。前田 動画を拝見させていただきました。アクセス数を確認すると17万件以上もありましたね。「本所七不思議」の包装紙(http://yamada8.com/)現在の人形焼の品揃え(http://yamada8.com/)

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