中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.610松阪名物「中華そば」の誕生前田 全国的に展開し、大きく商売をして儲ける大企業に比べ、拡大戦略をとらずに利益を出すのは本当に難しいことです。今回は歴史ある商店街で、何年も続いてきた飲食店の例として、三重県松阪市の名店、不二屋食堂の野口社長にお話を伺います。野口 どうぞよろしくお願いします。当店は何よりも地元の方に繰り返しお越しいただくお店になることを目指しています。石田 最初に創業当時のお話をお聞かせください。野口 当店は1929年に祖父がうどんのお店として創業しました。当時は街の東側の歓楽街に立地しておりました。近くに映画館があり、帰りのお客様が当店に寄ってお召し上がりになっていたようで、かなり遅い時間帯まで営業していたと聞いています。2代目の父は今年83歳で今も現役で応援してくれています。店が一番忙しい時代に生まれたという父ですが、自然と後を継ぐことになったと聞いています。石田 御社の看板メニューである「中華そば」登場のきっかけをお教えください。野口 当初、周囲に同じうどん屋の仲間のお店が沢山あり、祖父は店の将来を考え、うどん以外の看板メニューが必要と感じていたようです。そこで、祖父は松阪から近い大都会の大阪に何度も視察に通い、大規模な中華料理店で五目そばとタンメンに出会いました。それが支那そばに野菜を載せた現在の当店の中華そばの原型です。タマネギ、キャベツ等の身近な食材で味と値段とボリュームにこだわりのあるお客様の要望に応え、味は得意とするうどん出汁をアレンジしました。考案当初は、祖父の友人達にはかなり不評だったそうで、「こんなもん売れるとは思えない」と散々な評価だったと祖父から聞きました。しかし、中華そばは導入直後から評判となり、周囲のうどん屋でも次々と導入されたそうです。一時は各店舗が独自の味付けの中華そばをメニューに加え、競争しあいながら松阪独自の中華そばの知名度を向上させていたようです。父も私も創業者である祖父が付けた中華そばという名称をひたすら守ってきました。この時代があったため、松阪の方々には中華そばと言えばこの味、この具材というイメージを持っていただいていると思っています。3代続く老舗中華料理店経営の秘訣有限会社不二屋食堂は、三重県松阪市の松阪駅前の商店街に立地する創業90年の老舗中華料理店である。3代目社長野口克己氏より、三重県松阪市で評判の当店の経営のノウハウと事業承継などについてお話を伺った。社長プロフィール野口克己(のぐち かつみ)。1961年生まれ。厨房に立つ先代の父親とともに、毎朝6時半に仕込みに取り掛かり、閉店時間まで手づくりの味を作り続けている。経営者インタビュー【有限会社不二屋食堂 不二屋】中華そば店不二屋食堂 野口克己社長創業者:野口榮一氏

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