中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.624千葉商科大学経済研究所 中小企業研究・支援機構について1 大学研究所における中小企業研究・支援の重要性我が国の中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しており、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や後継者難の深刻化、労働生産性の伸び悩みなどの潜在的問題に加えて、第4次産業革命と称されるIoTやAI等の活用による技術革新、キャッシュレス化の進展や本年10月に実施される消費税率引き上げによる社会構造の変化などの様々な転換期の間で、令和の時代に引き継がれた中小企業や小規模企業の経営課題は山積しています。このような課題に、国、都道府県、中小企業基盤整備機構などが様々な中小企業支援施策を実施していますが、その成果は十分に発揮されているとはいえません。こうした一因は大学の有する知的資源が必ずしも有効に活用されていないことにもよります。一部の企業が豊富な資金と情報を持ち、経済・経営研究に大きな役割を果たしていることは事実ですが、企業の持つ貴重な情報が企業内に止められて広く一般には公開されず、また、その分析にはビジネス目的からの制約があります。マス・メディアは、新しい情報の提供には有効ですが、長期的視野から、理論的研究と歴史的研究に基づいて現状を評価するという点では不十分です。また、大衆を対象としているために特定の問題を鋭く追究するということが困難です。日本のシンク・タンクは、優れた委託研究を行っているものの、依頼先の意向に制約されます。官庁は優れた人材と豊富な情報を擁しており、政策立案能力があるとされていますが、その政策評価を自ら行うことが困難です。真理追究を目的とする大学の研究者は、理論的・歴史的研究を行い、その成果を広く公開していますが、現場との接触が乏しく、企業の実態に深く切り込めていません。こうしたことから、大学の研究所が企業、官庁、経済団体、研究者等、相互の連携強化に向けたパイプ役となり、国民経済の発展に寄与する情報の伝達と研究水準の向上に努めることが益々重要となっています。2 機構の発足中小企業研究・支援機構は、大学の擁する教育・研究資源を基盤に、中小企業に関する産・官・学連携の共同研究を推進するとともに、経営革新・経営改善・人材育成などに関する実践的な情報提供を通じて中小企業を支援することを目的に、2012年4月に、千葉商科大学経済研究所内に設置されました。日本の総企業数の約99.7%を占める中小企業(うち、小規模企業数は84.9%。2019年版「中小企業白書」付属統計資料1表参照)の経営支援が日本経済にとって極めて重要であることは明白です。内閣府・金融庁・中小企業庁による「中小企業支援ネットワークの構築について」(2012年12月14日付中小企業庁発表)にみられるように、全国47都道府県において、各県・市信用保証協会を中心に、地域金融機関、政府系金融機関、中小企業再生支援協議会、企業再生支援機構(現 地域経済活性化支援機構)、法務・会計・税務等の専門家、経営支援機関、地方公共団体、財務局、経済産業局等が連携し、中小企業の経営改善・事業再生支援を推進するためのネットワークが構築され、各機関の連携を通じて、情報交換や経営支援施策、再生事例の共有化等による中小企業の経営改善・事業再生の促進など、様々な対策が講じられています。本機構は、このようなネットワークと連携して、中小企業の発展に貢献しようとするものです。3 機構の運営本機構は機構長、兼担研究員(本学専任教員が兼担となる)、客員研究員で構成され、経済研究所副所長が機構長を兼務しています。機構長のもとに機構運営委員会が組織され、経済研究所会議で決定される基本原則を踏まえた事業計画を策定して機構が運営されています。なお、客員研究員の多くは、本学大学院中小企業診断士養成コースを修了した中小企業診断士から成り、研究員会議を随時開催するなどにより、事業活動の発展強化に向けた意見等を広く聴取して機構の運営にも反映しています。4 機構の活動本機構は主に次の5つの事業活動を行っています。研究調査活動の推進第1に、中小企業関連の情報収集等により研究調査活動を推進しています。とりわけ、豊富な経験と実績のある

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