中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.626編 集 後 記『中小企業支援研究』別冊Vol.6をお届けいたします。本号の発刊にあたり、関係者の皆様からのご支援、ご協力に深く感謝申し上げます。本誌巻頭言、時事評論において、本学名誉教授の太田三郎先生、ならびに関西学院大学大学院教授の佐竹隆幸先生から、企業の倒産と中小企業等における事業承継について興味深いご示唆をいただきました。近年、これらの問題は、日本経済を揺るがす深刻な問題、解決すべき課題として大きくクローズアップされております。その背景には人口の減少や少子高齢化という、産業や経済の成長を阻害する厳しい要因があります。そうした環境変化の中で、中小企業や小規模事業者がどのように事業の継続をとらえ、また、現実的に対処していくことができるか、そのことは本機構にとっても、今後も追求し続けていかなくてはならない重要な課題であると思います。本誌では、倒産はイコール企業の死滅でなく、倒産する企業が再チャレンジできる文化こそが、社会全体の活力を高めるという視点、そして再生できる企業は、経営者の強い意思、従業員の高いモチベーション、地域社会にとって必要な存在であること、金融機関や取引先、顧客からの支援・援助がポイントであることや中小企業及び小規模事業者の事業承継を円滑に進めるためには、日本的経営の再認識が重要であるという視点などについて示していただきました。本誌の話題のコーナーとして継承している「経営者インタビュー」では、4社の経営者の皆様からお話を伺うことができました。貴重なお時間を割いてお話しいただきました皆様には心よりお礼申し上げます。鉄鋼シャーリング業の株式会社京江シャーリング経営者、下河原英道氏からは事業承継のタイミング、仕入先、従業員との強い絆がその成功要因であることと、その重要性についてお話を伺いました。創業以来70年以上の事業を継承している東京下町の人形焼の名店、株式会社山七食品「山田家」社長の山田昇氏、松阪名物「中華そばの不二屋」三代目経営者、野口克己氏からは、名店誕生の秘話と、味、おいしさの秘密についてお話を伺いました。また、その中ではお客様と家族、従業員との強い絆についても示唆されました。自動切断機の製造販売・部品加工の株式会社荻野精機製作所社長、荻野正秀氏と副社長の荻野真也氏からは、創業60年を迎える同社を支えてきた従業員にとって働きやすい職場環境づくりへの取組みの歴史をお話しいただきました。中小企業者、小規模事業者にとって事業承継の問題は、さまざまな内部・外部環境の要因によって簡単には進みにくい現代社会において、ご紹介した企業が示すように、家族や従業員、取引先との強い絆、地域社会に必要とされて存続していることを思えば、事業の承継が人間性、社会性の視点を重視して進めるべきであることが示唆されていると言えるでしょう。本誌が読者の皆様の事業の継承あるいは研究のお役に立てれば幸いです。『中小企業支援研究』編集委員長前田 進

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