中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.61倒産しても再チャレンジできる文化こそ、社会の活力を高める千葉商科大学名誉教授太田 三郎先日、山川出版のWebメデイア「ヒストリスト」から取材をうけた。経営者やビジネスパースンが失敗をした際、どのように向き合えばよいか、その対応について、企業倒産の視点から伺いたいという趣旨であった。「倒産」は、企業にとって「最終局面」のように思われがちだが、それは間違いで、こんにち事業再生の取り組みは、特別なことではなく一般的なことで、法的措置(民事再生法など)やM&A の仕組みも整っている現在、ビジネスの終わりではない。確かに、倒産はビジネスにおける大失敗の一つではあるが、必ずしも倒産イコール企業の死滅ではないことを倒産・再生の研究から言及した。多くの歴史書のなかであるような、当事者が戦乱で大敗を喫しても、最後には成功を勝ち取ったように、ビジネス上でも倒産という事態は、再生のためのひとつの経営プロセスと考えるべきである。Aゾーンは企業が倒産している状態。債務超過を解消するなど、主に財務健全性を上げることでBゾーンの「応急再生」を果たす。企業価値を倒産する前の状態に戻せればCゾーンの「本格再生」となる。この状態を長く続け、さらに企業価値が向上した状態を「持続型再生」という。いかにCゾーンの状態を維持するかが再生のカギとなる。それでは、倒産から再生できるのはどんな企業なのか。東日本大震災のような究極の局面で、倒産から再生を果たせた企業の大きな特徴は、以下の要素がポイントとなった。1.事業を継続させるという経営者の意思の強さ2.従業員のモチベーションが高い3.当該企業が地域社会から必要とされている4.金融機関の支援が強い5.取引先、顧客の支援・援助がある上記5つの要素の中で、とりわけ従業員のモチベーションが高いことが重要と思われる。東日本大震災のような究極の状況では、地域社会の関係が深く、経営者自身が鮮明な企業理念を持ち、特に従業員の働く意識を大切にしてきた企業が強い。この非常事態にあらわれる再生の主たる要素は、利益至上主義よりも人間至上主義にあるといえる。実際の事業再生統計をみると、2000〜2015年に民事再生法を申請した法人のうち、80.2%が再生計画を認可された。意欲のある経営者に対しては、再生の間口は広い。ただし、認可された法人のうち2015年時点で生存しているのは36.3%で、現実の再生は厳しいと言わざるを得ない。わが国でも再チェレンジできる文化を根付かせ、社会活力を高めることが経済活性化に結びつく。出典:山川出版、Webメディア「ヒストリスト」の以下の特集号を引用し、その要点をまとめた。特集「大敗から学ぶ Vol.3」 倒産から立ち上がる最強ビジネスの考え方http://www.historist.jp/articles/entry/feeling/thinking/048976/

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