中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.63い、ということで兄は独立しました。最初はスチールハウスでコンビニや個人住宅を扱っていましたが、あまりうまくいかず、その後、集合住宅を手掛けました。老人ホームの建設途中に施主が倒産したのをきっかけに、「ヒューマンアート」という高齢者集合住宅を始めました。兄の会社は8年間で大きな赤字を抱えましたが、その後、「株式会社シルバーウッド」という介護会社を創立し、「サ高住(サービス付高齢者向け住宅)」の業績が伸びて、借金を返済しました。そんな事情もあり、父が60歳、私が32歳の時に社長になりました。その後、父は会長へ就任しました。父はコイルセンターを作るのが夢だったようです。44歳の時にはそれを成し遂げたので、その後はあまり事業をやる意欲がなくなったように見えました。そのため早く世代交代が行われたのだと思います。引き継いだ後も数字についてもほとんど言われたことがなく、仕事の引継ぎもなかったのです。コイルセンターとしての機能を整備する大塚 シャーリング加工業からコイルセンターへと積極投資して業態を拡大していった時期の世代交代だったのですね。それでは、コイルセンターとはどのような製造形態なのか教えてください。下河原 私どもが取り扱う鋼材は、コイル状に巻き取られた鋼帯であり、それを切断加工することを主に行っております。設備機械としては、スリッター、レベラー、シャーリングなどの設置が必要で、その用地の確保ができたことで、平成18年にレベラーシャーラインが完成しました。ここで初めてコイルセンターとして稼働できたのです。コイルセンターでは、レベラーやシャーリング機械によるコイルを所定の寸法に切断加工するばかりでなく、スリッターにより、コイル幅を分割してより狭幅のコイルにして納めることも多いのです。場合によっては、同業者に加工を一切加えず販売することもあります。このため、JFE商事等から購入したコイル母材を船橋にある倉庫に入庫・保管し、加工の必要に応じ、こちらの工場に移動することで、工場内の在庫の調整とお客様の早急な注文に応えています。ある意味、卸売流通機能を担っていると言えます。大塚 コイルセンターとは、設備ラインが大がかりであり、装置産業的な色彩を持つことがわかりました。設備面で意識していることがあれば教えてください。下河原 おっしゃるとおり装置産業的色合いもあります。当社の敷地は830坪ありますがスリッターラインは約25m、レベラーラインは約30mあり、両ラインが一直線上に配置されておりますが、スリッターラインは南方向で加工され、レベラー加工は南から北の方向で逆になっております。これは私どもの加工がスリッター、レベラーそれぞれ単一のものが多く両工程を経由するものが少ないためです。加工後の製品を北側、南側の入出庫口に置くことで効率的に加工を行っています。このように設備については、常に前向きに捉え、工夫を凝らしています。今年の秋には、レベラーラインの新規入替を行う予定です。大塚 製造現場が広い割に、工場現場の管理がかなり行き届いていると思われますが、特別気を配っている点がありますか。下河原 私どもの原材料や製品は、その重量から主に天井クレーンを使用して運搬を行っています。運搬と出荷の担当者を配置し製造担当と情報を共有することで、搬入から出荷まで行っていますが、一歩、間違えると大きな事故に繫がります。このため工場内の通行路については、オレンジ色に塗装し、油の飛散などに注意を払っています。安全の確保と品質の向上には、現場がきれいでなくてはだめです。それは最も基本的な、現場の整理、整頓といった5Sによる現場環境の整備が大切と考えています。仕入れ先との強い絆大塚 コイルセンターで扱っている原料鋼材はどこから仕入れるのですか、また、どういった点が強みですか。  下河原 メインは薄板の鉄鋼材です。JFEスチール、JFE商事から全体の90%を仕入れています。最も関係性を大事にしているのはこのメーカーとこの商社です。商いとして扱っているのは鉄であり、鉄はリサイクルできるしエコ素材です。このサイクルの一部にいられることが嬉しく、鉄を扱う商いは自身やっていて楽しいものです。加工といってもやっているのは切ることだけです(一次加工)。JFEから仕入れた高品質な鉄鋼母材を適正価格でタイムリーに販売できることが強みです。早瀬 一次加工としての強みを生かした商売であるということですね。現在の経営面の問題はどういったことでしょう。下河原 コイルセンターの加工賃が30年間変わっていないことが、問題になっています。コイルセンターの加工賃を上げていかなくては生き延びていけません。理由としてよく言われているのは、鉄を一番よく使う自動車メーカーと鉄鋼メーカー(商社)で価格を決めてしまうからです。その決定事項が我々のような会社に下りてくるということです。スリッターラインの機械装置

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