中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.65下河原 大阪に新たな会社として「株式会社大江スチール」を昨年の11月に設立しました。先々週、大江スチールを通して輸出した材料を見るためにインドに行き、現地のバイヤーにも会ってきました。用途として、建材が全体の7割、パイプ等のインフラ整備需要がほとんどでした。道路を舗装する下地に鉄板を使う等、日本では考えられない使い方もありました。このことをJFEスチール・商事に報告すると、とても喜ばれました。「海外に輸出した鉄がどう使われてるか」ということにとても興味はあるが、自分たちではわからないからです。早瀬 日本の鉄鋼材は現地ではどのように評価されていますか。下河原 中国でもインドでも作れない高品質のハイテン材(高張力鋼板)に対する評価は高いです。特に車の材料にはなくてはならないものです。日本以外でつくれるところはほとんどありません。実はそれこそが国内で販売しにくくなっている理由なのです。早瀬 どうして販売しにくくなっているのですか。下河原 ハイテン材がすごく固いからです。固くて軽い素材であることが売りですが、あまりに固くて我々でも加工できないくらいです。非常に高価な素材ですが、そういうものを新設した会社ではリーズナブルな価格で輸出しております。インドに行って、はじめてハイテン材が面白い使われ方をしているのがわかりました。大塚 やはり、そういった素材というのは韓国や中国では生産できないのですか。下河原 韓国の「ポスコ」はかなりできるようになってきました。台湾の「CSC」でもある程度できるようになってきました。でもここぐらいまでですね。車産業中心ですが、どんどん日本の鉄鋼の技術開発は進んできています。早瀬 企業と企業の技術開発の追いかけっこですね。でも、日本の技術に関する情報量はすごく多いので、難しくなればなるほど日本の技術は追いつかれないという可能性も高いですね。取引先に認められるナンバーワンの会社を目指す大塚 最後に今後の御社の方向性(ビジョン)をお教えください。下河原 実は先のことは考えられないです。自分のなかでは、今やるべきことに集中して取り組んでいるため、将来こうしたいというビジョンはありません。大塚 そうは言っても、昨年インドに輸出する会社を大阪に創ったりして、着実に先を見て行動しているように見えますがどうなのでしょうか。下河原 今度の新会社の設立はJFEとの関係をきちんと続けていくことで可能となりました。ビジョンというより現実的な対応課題なのです。今はこうしたことをやっていくしかない時期なのかなと思っています。早瀬 やはりJFE関連のなかでの動きを捉えて行動していくのが大事なのですね。下河原 自分でこうありたいというのはありますが、まず、JFEスチール・JFE商事の取引先のなかで認められる存在になることが大事であると認識しています。出来たら取引先のなかでナンバーワンの会社になりたいです。それほどこのJFEスチールというのは魅力ある素晴らしい会社です。次に、仲間業者やエンドユーザーのお得意先からも認められ信頼される会社を目指して努力していきたいと考えております。大塚 厳しい鉄鋼関連業界のなかで、人を活かす働きやすい経営環境を実現し、今できる手法で改善策を打ち出すという経営姿勢に多くのことを教えられました。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。■企業概要企業名………株式会社京江シャーリング本社所在地…千葉県浦安市鉄鋼通り1-2-11資本金………30,000千円創業…………1966年(昭和41年10月)事業内容……鉄鋼シャーリング業(冷延・表面処理鉄鋼の加工及び卸売業)年商…………38億円(平成30年度)従業員数……45名■インタビュア:大塚愼二…千葉商科大学経済研究所運営委員■インタビュア及び原稿執筆:早瀬達…千葉商科大学経済研究所客員研究員中小企業診断士出荷待ちの加工済み鋼板左から早瀬・下河原社長・大塚

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