中小企業支援研究vol6
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中小企業支援研究 別冊 Vol.66時代の変化に対応した歴史前田 本日は、人形焼の老舗として長く堅実な経営をされている株式会社山七食品(人形焼「山田家」)の経営の秘訣などについてお話を伺います。はじめに、山田家の歴史からお聞かせください。山田 創業者は先代の社長で私の父である山田実です。当社は戦前から食品卸をしていたのですが、父が戦争から復員してきた後に食糧統制があったため、食品卸をあきらめ、電気屋を開業したことから始まります。その後、食糧統制が解除され、昭和26年に有限会社を設立し、鶏卵卸問屋を創業しました。卵の取引先のなかに浅草界隈の人形焼店があり、その評判を知った先代社長が人形焼をつくり始めたことで、人形焼「山田家」の歴史が始まりました。その後、半世紀の間、製造小売である人形焼と食品卸である鶏卵卸売業の2つの事業を柱に経営を続けてきましたが、5~6年前にやむを得ず鶏卵卸売業を撤退いたしました。現在の若い人は、御用聞きや配送を好まなくなり、人材不足になりました。とはいえ、おいしさを保つためにはコールドライン流通が必須で、そのための対応が過負荷であったことが主要因でした。中川 大革新でしたね。山田 現在は製造小売である人形焼に集中して経営しております。鶏卵卸業を行っていた頃の売上は3億円程度ありましたが、人形焼専門になってからは1.6億円程度になりました。しかし、鶏卵卸業の利益は薄いが、製造小売の利益率は高いので、経営へのインパクトは少なくてすみました。生産者の協力でできた「安い、うまい、大きい」人形焼中川 甘いものが巷にあふれているなか、山田家の人形焼が愛されている秘訣を教えてください。山田 下町は「安い、うまい、大きい」が揃っている必要があります。山の手では小さなケーキが400円~500円で売れますが、下町のお客様が求める「安い、うまい、大きい」が受け、山田家の人形焼はこれにきめ細かく対応してきました。「安い」については、人形焼で一番人気の「たぬき」で、1個130円で販売しています。他社であれば1個150円以上はすると思います。他社と異なり山田家には食品卸の免許があるので、粉、砂糖、卵などの良い材料を安く仕入れるネットワークがあります。また、「うまい」については、生地と餡にこだわりがあります。外国産には食材がセットになった一斗缶入りの価格が3分の1のものもありますが、自社で素材を厳選して製造しています。生地はミックス粉を使用せず、卵は、鶏卵卸問屋であった強みを活かして清流久慈川の近くで生産されている奥久慈卵を提供してもらっています。奥久慈卵は黄身がしっかりしていて高さがあるのが特徴で、焼き上がりの生地がフワッとやわらかく仕上がります。生地には良質な蜂蜜も使用しています。蜂蜜を時代の波を乗り切り現代に生きる下町老舗経営の秘訣株式会社山七食品は、東京銘菓として名高い人形焼の製造販売の老舗である。創業73年の歴史を誇る和菓子店「山田家」の2代目社長山田昇氏より、下町錦糸町で評判の当店の経営のノウハウと事業承継などについてお話を伺った。社長プロフィール山田 昇(やまだ のぼる)。1948年生まれ。会社経営の他に商店街の活性化に尽力し、全国商店街振興組合連合会副理事長、東京都商店街振興組合連合会副理事、錦糸町商店街振興組合理事長を務めている。経営者インタビュー【株式会社山七食品 人形焼『山田家』】人形焼専門店『山田家』 山田昇社長 

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