中小企業支援研究vol6
9/30

中小企業支援研究 別冊 Vol.67加えることにより焼き色の仕上がりが良くなります。奥久慈卵と蜂蜜と当社の職人の技術によって、風味がよくしっとりとした食感の人形焼ができあがります。餡は使用する水、小豆、砂糖にこだわっています。水も水道水に含まれるカルキが餡の良い香りを飛ばしてしまうので、アルカリイオン水を使用して良い香りを大切にしています。小豆は北海道産の小豆だけを使用しています。現在は廃棄物処理の問題がありますので、仕入先の餡製造会社から半製品(さらした大豆)の良質のものを提供してもらっています。砂糖は極上のザラメを使用しています。このように、山田家では素材にこだわっていますので、多くの生産者の皆様の協力をいただいてきました。また、甘さも時代に合わせて変化させています。昔はお客様から「餡子はもっと甘いほうがいい」というお声がありましたが、現在は甘さが控えめになってきました。そこで、昔と比べて甘さを抑えた餡にしています。甘さを抑えると日持ちが短くなりますが、皮に蜂蜜を加えていることにより日持ちが良くなり、さらに味や焼き上がりの色も良くなっています。また、餡の種類は、こし餡のみを使用しています。つぶし餡は、鯛焼きのような皮が固いお菓子に合いますが、人形焼のような皮が柔らかいお菓子に合う餡は、こし餡であると考えています。山田家は浅草の人形焼に比べて後発でしたので、時代のニーズに合わせて比較的自由に味を変化させてくることができました。伝統的な人形焼は皮が固めで、山田家も創業当時は伝統的な人形焼を製造していましたが、徐々に改良を加えて、独自の味を創ってきました。山田家は鶏卵卸業の強みを活かして生地に卵を沢山入れることにより柔らかい皮を作ることに成功し、柔らかい餡子との絶妙なマッチングを実現させて、お客様にもご納得いただいてきました。この味と品質の強みが長く経営できた要因のひとつと考えています。中川 お客様の声はいかがですか。山田 なかなか良い意見はいただけないのですが、時間が経過しても美味しく食べられると言われます。一般的な人形焼は1日経過すると固くなって蒸かさないと食べられないのですが、山田家の人形焼は1日経過すると餡の水分が皮へ浸透してしっとり感が出てきて、焼き立てとは別の風味が楽しめます。前田 このことはお客様へお知らせしたいですね。流行を追わない中川 お客様の年齢層はいかがですか。山田 お客様は女性が圧倒的に多い状況です。若い方もいらっしゃいますが、総じて年配の方が多いと思います。人形焼に合う飲み物はコーヒーより煎茶ですから。前田 最近、若い女性の間ではタピオカが流行のようです。御社では流行についてはどのように感じていますか。山田 通年の品揃えの点では、瓦せんべいやビーンズ煎餅も定番商品として品揃えしており、私が社長を引き継いだ約20年前には、私自身も人形焼・瓦煎餅・ビーンズ煎餅を焼いていました。しかし、日持ちが悪くコントロールできなくなりますので、嗜好の変化に対応していますが、山田家は流行を追うことなく地道に革新を行っています。生産設備の近代化中川 本店にある工場を拝見させていただきましたが、生産形態についてはいかがですか。山田 先代社長の頃は完全に手作業で生産していました。しかし、私は機械化・自動化を進めてきました。先代には怒られましたが。機械化・自動化の理由は、第一に衛生面で非常に有利であることです。製品に直接人が手を触れることが無いまま人形焼を完成させることができます。第二に労働環境の改善があります。手作業の頃は餡を絞り出すために腕が腱鞘炎になってしまう職人が多くいました。現在では皆無にすることができました。また、機械化・自動化による生産スピードの向上により、労働時間が短縮できました。手作業の頃は、朝5時頃から夜7時、8時頃まで生産していましたが、現在では朝6時から始めて、午後2時頃には生産を終了することができます。第三に材料の歩留まりが向上しました。この効果で高級な材料も使えます。第四に人材の育成に効果があります。現在の生産設備であれば、1週間くらいで機械の操作ができるようになります。インタビューに答える山田社長(右)と中川人形焼の自動化・機械化設備

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 9

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です