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15特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用46会計の本質的な価値とは?1 会計の本質的な価値とは何か。筆者が代表を務める弥生株式会社は、多くの中小企業、個人事業主向けに会計ソフトを提供しており、それが故に、事業者の方とお話しする機会も多い。お客さまに何のために会計をするのかお伺いすると、「申告しなければいけない」「税金を納めないといけない」、あるいは銀行から融資を受けている場合は年に一回は「決算書の提出を求められる」等、やむを得ず行う後向きな業務であるという認識が一般的である。 しかし本来、会計の本質的な価値とは、「自身の事業がどのような状況にあるのかを正確かつタイムリーに把握する事」であり、それにより「事業の健全な運営と発展を実現する事」である。車のダッシュボードを例にとると、会計は、速度計であり、燃料計である。逆に会計を適切に行わないというのは、自身の事業が現在、時速何キロで走っているのかわからない、あるいは燃料が残り何リッターあるのかわからない状態で走っているようなものだといえる。理想と現実のギャップ2 もっとも現実には、会計は、ついつい後回しになり、ギリギリになって慌てて行われることが多く、なおかつ結果が有効に活用されていない。やらなければいけないことはわかっているものの、目の前の仕事が優先され、気が付くと数ヶ月分溜まっている。溜まれば溜まるほど億劫になり、申告期限が迫ってきてようやく着手する。何とか申告期限に間に合わせるものの、税金の額を見て憂鬱になるだけで、損益計算書や貸借対照表を精査することはない。こういった会計の現実は決して珍しいものではない。このような状況では、事業の現況を正確に把握し、事業の運営に役立てるという会計の本来の価値は失われがちである。 なぜ理想と現実のギャップが生まれるのか。二つの要因が考えられる。一つには、手間がかかるから溜める、溜めるから手間がかかるという負のスパイラルが発生しがちであること。証憑を整理し、伝票を入力し、転記/集計することは手間であり、負のスパイラルを誘引している。もう一つには、決算書や申告書を作成することが目的化していること。会計はタイムリーに行われなければ、会計によって可視化される数字を事業の運営に役立てるという本来の目的は達成できない。その代わりに、明確な期限のある決算書や申告書の作成が目的となりがちである。FinTechがもたらす可能性3 近年注目されるFinTechは、上述の会計業務の理想と現実のギャップを埋める可能性を有している。まFinTechが変える会計の今とこれから弥生株式会社代表取締役社長岡本 浩一郎OKAMOTO Kouichiroプロフィール1969年横浜市生まれ。東京大学工学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校 経営大学院修了。野村総合研究所、ボストン コンサルティング グループを経て、2000年6月にコンサルティング会社リアルソリューションズを起業。2008年4月より弥生株式会社 代表取締役社長に就任。2017年2月にアルトア株式会社を設立、代表取締役社長に就任(弥生株式会社 代表取締役社長と兼務)特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用

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