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22特 集変化の時代を生き抜くFinTech活用46課税区分のソートがなくなったことにより、手書きの技術者は息を吹き返した。そして、手書きの技術者は老衰により自然消滅し今日に至っている。会計ソフトと規格の不統一5 このようにして、次第に会計ソフトは大いなるイノベーションを達成することになる。そして、会計ソフトは全盛期を迎えることとなった。 ところが、会計ソフトは日本では独自の発展を遂げることになる。会計ソフトメーカーがこのビジネスチャンスに乗じて、いずれも優劣つけがたい戦いをしてきた。その結果、日本では60社120種類以上の会計ソフトが乱立することになった。この状態を筆者は会計ソフトのガラパゴス化と呼んでいる。 これには、弊害が伴った。会計ソフトの規格が不統一となってしまったのである。試算表や決算書を作成するには基本的には何の問題もないが、いざ、会計ソフトを加工するとなれば会計ソフトごとに違う規格は障害となる。したがって、この障害に気づくとどうしても会計ソフトの規格の統一はできれば必要なことになる。 これまで、そのことが解消できたかもしれない事件が2度あった。 1度目は、1995年にあった。紆余曲折の末、マイクロソフトがインテュイットを買収しようとした。ちなみに、インテュイットこそ現在の弥生会計のルーツとなる会計ソフトである。ところが、アメリカ司法省はマイクロソフトのインテュイットの買収を、独占禁止法を盾に阻止した。このとき何らかのはずみで、買収が成立していたら、今頃は、マイクロソフトOceにAccountというネーミングの会計ソフトが誕生していたかもしれない。あわせて、会計ソフトの規格の統一もできていただろう。 2度目は、1997年ころにはじまったプロジェクトがあった。これには、国内大手の会計ソフトメーカーも参加した。ひとつには、マイクロソフトの会計ソフトへの思い入れは捨てがたいところがあったことと、国内の会計ソフトメーカーも将来的なことを考えると参画しないリスクが大きいと考えたのであろう。ただし、2年程度の期間を経てこのプロジェクトは消滅した。聞くところによると、会計ソフトメーカーの利害が一致しなかったためであろう。成功していたら、今頃は会計ソフトの規格の統一が実現できていたかもしれない。会計ソフトの規格統一に向けた試み6 会計ソフトの規格が不統一だと、様々な障害が発生する。企業の側からすれば、企業ごとにひとつの会計ソフトを選択するために不便さはさほど感じない。ところが、会計事務所の仕事は実に不便になる。 筆者は、会計ソフトの規格が不統一であることの弊害をいくつか考えてみた。 まず、クライアント(関与先)に経営計画を提供しようとしても、思い通りの仕事ができない。会計ソフトごとに装備された経営計画ではもの足りないので、会計データを加工しようとすると、会計ソフトのデータをCSVで切り出してエクセルで加工せざるを得ない(会計ソフトの中にはCSV切り出しにすら対応していないものもある)。企業経営者にとって有益なアウトプットを提供するとなると、これには膨大な手間がかかる。 また、CSVで切り出した会計データを税務監査する手法については、筆者はすでに考えていた。何回か試行してみたが、やはりこれも手間がかかりすぎる。もとより、会計伝票は、借方勘定科目、貸方勘定科目、日付、金額、消費税課税区分、摘要の文字列から成り立っている。しかも、これらのデータの要素はすべてデジタル化されたものである。そもそも、人間の目で税務監査するときは会計伝票データの要素を目で追いかける。同じようなことはITでもできる。つまり、究極のところ人間がする税務監査はITでもできることになる。さらに、ITは不平不満を言わないし、コンデションにも左右されない。また、人間がすると伝票に目を通すだけでも一定の時間を要するが、ITだと瞬時に処理することができる。つまり、早くて正確に処理できる。 したがって、会計ソフトの規格が不統一は解消したい社会的課題だと考える。 そこで、弊社は次に会計ソフトの規格統一について3度目の試みをすることになる(後で述べる)。

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